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時々、日帰り旅行を兼ねて水戸室内管弦楽団(MCO)を聴きに行きます。今年は、盛りにはまだ早いものの、筑波山で紅葉を楽しんでから水戸へ向かいました。
水戸室内管弦楽団 Cem.クリスティーネ・ショルンスハイム Fg.ダーグ・イェンセン、Fl.工藤重典 C-Alt.ナタリー・シュトゥッツマン ♪J.S.バッハ/チェンバロ協奏曲第1番 ♪ヴィヴァルディ/ファゴット協奏曲、フルート協奏曲作品10~第6番 ♪J.S.バッハ/ブランデンブルク協奏曲第3番 ♪ヴィヴァルディ/スターバト・マーテル、 歌劇「アテナイーデ」~第3幕のアリア「私の心は鳥かごの中」(アンコール) 今回のMCO定期は指揮者なしの弦楽合奏に錚々たるソリストが華を添える趣向。今年は7月の紀尾井シンフォニエッタ、11月の東京ヴィヴァルディと、指揮者なしアンサンブルの演奏を聴く機会が多いですが、その極めつけとも言える芸術性の高い音楽を堪能できました。 1曲目、期待のシュロンスハイムのチェンバロは上品で節度のある演奏。それに合わせて弦楽合奏も緻密で控えめ。良い意味でミニマムな美演でした。この後、シュロンスハイムは全曲に通奏低音として参加します(なんと贅沢な!)。 2曲目、イェンセンは振幅の大きい表現と粒立ちの良いタンギングで、ヴィヴァルディらしい装飾を自在に施してファゴットなのにきらびやか。当時の楽器でこんなに吹けたのだろうか?合奏も伸びやかで、バッハとの精彩の対比が鮮やか。 工藤氏のFlコンは輪をかけてスリリング。超絶技巧の早吹きパッセージを、まるでヴァイオリンの飛ばしのようにエッジが効いた音色で奏できります。やはりフルートはファゴットに比べると華やか。演奏の素晴らしさと相俟って、会場が明るく盛り上がりました。 個人的な白眉は休憩後のブランデン3番。前プロの伴奏的演奏とは一線を画し、チェロ以外スタンディングで体を自由に使いながらダイナミックな振幅を生んでいきます。特にVaがVn・低弦に負けないパワーを備えていることで、各楽器ソロの断片が途切れることなく受け渡されて完璧にひとつの音楽を成していきます。そのクリアな構築美はまさに目から鱗でした。そして、シュロンスハイムによるカデンツァを経た第3楽章は“何かが起きた・切り替わった・降りてきた”ようなマジカルな音楽が展開されました。特にリピート後の後半は輝きというか拡がりが圧倒的で、いつの間にか夢中になっている内に終わっていた印象。会場も感じ入った・恐れ入ったというような感嘆の拍手で応え、なんとも幸福な時間が流れました。 メインに据えたシュトゥッツマンのスタ・バトは刺激的な迫真の舞台。「独壇場」という言葉がうってつけで、シュトゥッツマンはtuttiでは客席に背を向けて全身で指揮をし、舞台を広々と動いて音声だけではない“存在感”でも音楽を体現します。歌唱と合奏は渾然一体となって進行し、全9曲が何とも切実で琴線を揺らします。簡潔(25分前後)な楽曲のおかげもあり、たいへん密度の濃い時間があっという間に過ぎた印象でした。シュトゥッツマンは流通しているショートカットの写真からイメチェンして、ケニーGのような(失礼?)ミディアムヘアにタイトスーツの格好。パワフルな歌唱はそのままに一段と知的自由度が高まったような、すこぶる魅力的なアーティストでいらっしゃいました。 ソリストが豪華ながらプログラムが地味だったので、まさかここまで心躍る音楽体験になるとは思っていませんでした。まったく恐れ入りました。そして終演後のロビーでは、オーラに包まれた吉田秀和館長とすれ違い、勝手にお手本として敬愛しているチェロの原田禎夫さんと言葉を交わす機会も頂けました。世界的な素晴らしい音楽家が参集し、舞台と客席の敷居は低く、大向こうを張らない芸術の良さを聴衆もしっかりと受け止める。水戸での理想的な音楽関係が末永く構築されていくといいですね。時々お邪魔してそのお相伴に預かりたいと思います。
by mamebito
| 2008-11-09 02:59
| コンサートレビュー
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