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私にとって“座右に置きたいスタンダードな名盤”が待望の復刻です。
♪ブラームス/交響曲全集、ドイツ・レクイエム、 大学祝典序曲、悲劇的序曲、 ハイドンの主題による変奏曲、 アルト・ラプソディ、悲歌 エルネスト・アンセルメ+スイス・ロマンド管弦楽団 スイス・ロマンド放送合唱団、ローザンヌ・プロ・アルテ合唱団 Sop:アグネス・ギーベル、C-A:ヘレン・ワッツ、Bar:ヘルマン・プライ (録音:1963年~66年、ヴィクトリア・ホール、ジュネーヴ) ずっと探していたディスクでした。数年前に「アンセルメの芸術」シリーズでユニバーサルより限定発売された国内版を買いそびれ、その後中古店で出会うこともなく私にとって幻の名盤と化していました。当時レコ芸のオマケで試聴し、驚きとともに強く心打たれました。私が聴いた限り最も過不足のない“中庸美の極地たるブラームス”だと思います。 特徴としては、まずそっけないまでのインテンポを基調としていること。ただ、時折垣間見られる適度な間や揺らぎが音楽に自然な呼吸を与えています。練達の競泳選手が最低限の息継ぎで美しく泳ぎ抜けるよう。スコアに忠実な再現にはこの無駄のないテンポしかあり得ない、というような説得力があります。 もう1つの特徴は、声部バランスが比較的均等であること。Vnがリードしたり低弦の鳴りが目立ったり金管が飛びぬけたりすることは皆無。60’DECCAの優秀録音のおかげもあり、様々な声部がクリアに並存して新鮮。ブーレーズに通じる感じもしますが、あれほどストイックではなく各声部が自然に流れるのです。また、木管セクションのブレンドがレトロで味わい深く、これが中性的な弦と対等に絡み合う響は独特の風合いを醸し出します。それで十分ブラームスらしい。 全曲レビューは長くなるのでかいつまむと、素晴らしいのは交響曲2番&4番、それにハイバリと独レクでしょうか。特に4番の古典美(縦の合奏が精緻で和声がクリアなこと!)と自然にみなぎる高揚は最も深みを湛えています。2番とハイバリはOSRの明朗な滋味溢れる響と活き活きとしたテンポが曲想にベストマッチ。独レクは、合唱の声質が明るすぎるきらいもありますが、クリアかつ清楚な響が作品の真価をあぶりだしており、よくありがちなおどろおどろしい熱演よりもずっと心に響きます。1番や3番辺りは所々機能的に惜しい部分がありますが、緩徐楽章を中心に豊かで美しくホッとする名演だと思います。 アーノンクールやノリントン、ハーディングらが提示してきた新しい造形による演奏の目的は「作品の最も忠実な再現」であると思います。アンセルメ+OSRは彼らとは別の方法で、その目的を40年以上前に実現していたのではないでしょうか。もちろんOSRは現代のオケ水準からすれば最優秀ではありません。でもヴィルトゥオジティやゴージャス・サウンドがなくても、過度な工夫や慣習表現を削ぎ落とすことで、作品の真価を最も引き出せるのかもしれないと考えさせられます。 ブラームスの演奏は、ヴァントやアバドやチェリやクライバー、BPOやVPOやRCOやNDR響も大好きだけれど、豪演に接したあと垢を落としにアンセルメへ帰ってくるような気がします。
by mamebito
| 2008-06-28 15:32
| 録音
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