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最近出会ったとても魅力的なバッハ無伴奏の録音、その2です。
J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲(全曲) チェロ:ジャン・ギアン・ケラス (録音:2007年/使用楽器:Cappa (1696年製)) 現役で今もっとも好きなチェリスト。そして今もっとも気に入っている同曲のディスクです。 ケラスは技術卓越で自由自在、抜群のセンスが常に知的な刺激を与えてくれる稀有のアーティストだと思います。特にボウイングの美しさは比類無く、無駄な力が抜けた自然な演奏姿勢は視覚的にも惚れ惚れします。 さて、このディスクも期待通りの名演。過去の様々な名盤と比べて、自由度が抜きん出ています。それが奇をてらった表現に堕ちず、“新しい解釈の可能性”として強い説得力を持っていると思います。例えばカザルスやマイスキーやマのように“想い入れ”で聴くものを惹きつけるのではなく、常に客観的なケラスの目が品位を堕とさないようにコントロールしていることが感じられてすこぶる知的です。この作品にソウルやパッションを求めるリスナーにはその点「冷めている」と感じられるかもしれませんが、私は好みのタイプの演奏です。 特に第1番~第4番が素晴しく、聴きこむほどに新たな発見にあふれます。一方で第5番・第6番については、さすがにもう少し音に乗る情感があってもよいように感じなくもありません。あまりに技術がスマートで簡単そうに弾いてしまうので(笑)。しかしこの落ち着きと朗らかさが、今の彼がこの曲に与えた解なのだと思います。現代チェロでは技術的に難所が多い第6番であっても、他の演奏と同じ楽器とは思えないほど容易にケラス流の解釈に染めていきます。そして全ての響きに意識が通っている。脱帽。 ただ、決定盤と言い切れない点が2つ。1つは録音。確かに残響豊かで聴き易い音場は好印象ですが、その反面音楽の真価が若干ぼやけた感じがします。おそらく実演では、各作品の性格がもっと明確に描き分けられたことと思いますが、心地よい残響により癒しに満ちた音楽にまとめられてしまいました。悪くは無いですが、ケラスの音楽性はそれだけではないはず。 もう1つはDVDムービーのクオリティ。彼の自然な体の使い方やボウイングをじっくり見られると期待したのですが、PVのような作りで、弓と弦の接触点や手指の動きを接写する場面は僅少。眉間に皺を寄せて目をつむる表情はマスクに惚れたファンにとって垂涎のムービーでしょうが、演奏者として彼を楽しむには物足りない作りとなっています。オマケDVDに多くを望むのは贅沢かもしれないですが(笑) ケラスと同時代に生き、これからも演奏に接するチャンスが多々あるだろうことを幸せに思います。2008年11月の来日は行けるか微妙ですが(タロとのアルペジョーネは実演に接したい・・・)、これからも彼の進化を追い続けて行きたいと思います。
by mamebito
| 2008-06-01 12:56
| 録音
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