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2018年9月24日(月・祝)15:00~ 東京オペラシティコンサートホール 昔話を長々と語り始めたら歳をとった証拠。とはいえ、この機会に鈴木優人さんの思い出を語っておきたい。 10年前、BCJはJ.S.バッハ/カンタータ全曲シリーズの真っただ中。ライプツィヒに立ち寄って帰ってきたら、テーマが「ライプツィヒ時代」だったものだから飛びついた定期公演で、BWV146シンフォニアのオルガン・ソロに瞠目したのだった。驚異的な切れ味とチェンバロを凌駕する程の微細なニュアンス、こんなに鮮やかなオルガン演奏、雅明さんは振っているから一体誰が?と思ったのが優人さんとの出会い。その2年後、アンサンブル・ジェネシスの公演で再び目を見張ることになる。優人さんのチェンバロは精彩に富み、バロックから自作自演に至る音楽的タイムトラベルを鮮やかに奏で分けた。 現在に至る広範でメジャーな活躍は衆知のとおり、その後も何度か器楽の演奏を拝聴する機会を得て、いつも素晴らしい音楽体験をさせていただいた。この日は遂にというかやはりというか、BCJ首席指揮者のポスト就任お披露目公演、しかもBCJでモーツァルトは自分にとって新しく、ぜひにもと発売日に気に入りの3階センターブロックを押さえたのだった。 鈴木優人さんが作る音楽は、歌唱に比重を置き言葉が主導する父上の音楽よりも、より器楽的かつ劇的に聴こえた。今まで彼を器楽奏者として認識してきた私の先入観、だけではないように思う。冒頭の交響曲では、各楽器の限界を心得た上で追い込んでいるように聴こえ、ゆえに若干の瑕は生じたものの、作品のデモーニッシュな表情を描き出すことに成功していた。また、レクイエムでは声楽が音楽の主体となるのだけれど、器楽による各章の導入で鮮やかに場面が切り替わるのが印象的だった。例えば、レックス・トレメンデは冒頭の2音で鮮烈に場面を決定付け、続く付点のリズムも厳しく、器楽の緊張感が音楽を掌握しているように聴こえた。 そのBCJ器楽陣は、以前から弦楽器の充実は世界一級に違いなかったが、管楽器メンバーもいよいよ充実著しく、心から安心して演奏に身を浸すことができた。さらに菅原さんのTimpは揺ぎ無く、演奏の格調を幾段にも高めていて圧巻だったし、2本のVcは音色とパワーのみならず、特に懸田さんの弾き姿は美しさに一段と磨きがかかり見所にも事欠かない。そして世界が羨むBCJの合唱は、この日はレクイエムから登場したこともあってか、その後半から本来の伸びと声質を得たように感じた。これで独唱陣のバラつきがもう少し高い方に底上げされていたら申し分なかったのだけれど。 巷間ではクルレンツィス+ムジカ・エテルナのモツレクが大評判で、自分も完全に絆されているが、なに日本には俺たちがおるやんけ!とは仰らないまでも、実力を誇示するに十分な旗揚げ公演だった。そして、レクイエムながら動的で希望の光がさすような明るさをたたえ、大いに力を与えてくれる演奏だった。 最後に、忘れてはならないのが器楽奏者としての鈴木優人さん。エルトマンを導いた彼の鍵盤演奏は、曰はく言い難いのだけれど、やはりたいへん秀逸で味わいがあった。
by mamebito
| 2018-11-24 00:01
| コンサートレビュー
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