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2018年6月3日(日)14:00~ サントリーホール 他のメジャー楽団に比べてメディア露出は決して多くないけれど、クリーヴランド管には米国で最も魅力を感じている。シェフに迎えて長いメストとは、数少ないネットラジオやNHKのソフト放映を通じて、ここ数年の充実に強く惹かれてきた。待望の来日公演を聴いた。 The Prometheus Project と題して、このコンビが世界中で好評を博しているオール・ベートーヴェン・プログラム。後に聴くには、日に日に演奏の凄みが増していったそうだが、2日目のこの日も十分に世界超一級のオーケストラの美しさと蜜月コンビの至芸を堪能することができた。 特に、ベト4では弱音の美しさと表情の多彩さに感激した。第2楽章、Durでは優美を極め、Molでは神々しいほどの威容が備わった。後半のベト7に比べてプルトを減らしたサウンドが、フルート一本で時に室内楽的な作品に適し奏功したようにも思う。第2楽章終盤で木管から弦に受け継がれる旋律線のスムーズな美しさなど、なかなか聴けるものではないと思った。どのような仕込みの積み重ねがあったのか知る由もないけれど、時間をかけて丹念に彫刻された珠玉の成果を聴く心地がした。現在聴ける、最も透徹したオーケストラ芸術の一つだったのではないだろうか。 ffの全奏はあまり制御せず開放的に鳴らすメストさん。ベト7は1stヴァイオリン18型の巨大編成、ぶんぶんとうなりを上げるようなサウンドでたたみ掛けた。それでも、エキサイトしきらず、どこか醒めて統制された温度感で迫ってくるところが心地よい。第2楽章では、停滞しないテンポの中で、感傷に陥らずひたすらに弦を美しく交わらすマエストロのセンスを興味深く聴いた。全体の音楽造りは、テンポの揺れやアタックや凹凸がきつ過ぎず、敬虔なまでに真摯なスタンスを感じて好ましかったのだけれど、4月に聴いたブロムシュテットによるベト7が、ツボを心得てなお新たな表現に踏み出そうとしておりあまりに素晴らしかったものだから、この日のメストさんにはもう一歩踏み込んだ表現を求めたくもあった。 ベト7の第4楽章のリピート前を思い切り外したトランペットのベテラン奏者が、カーテンコールで立たせてもらえなかった時には「やっぱりメストさん恐っ」と思ったけれど、リズム&くさびセクションであるティンパニと一緒にカーテンコールをスルーしたところに、マエストロがクリーヴランド管をファミリーとして大事にしている優しさを垣間見た…というのは勘ぐりすぎだろうか(笑)。昔のレニングラード・フィルみたいに軍隊式とは言わないまでも、恐怖政治が敷かれているのではないかと思っていたところ、舞台上で見る楽員さんの雰囲気は、他の米国楽団と同様にフレンドリーで朗らかだったのも印象的だった。 蜜月の充実を聴きたいコンビだったし、超優秀なアメオケらしい透徹した瞬間を堪能できて満足ではあったのだけれど、欲張りを承知で言えば、ベートーヴェンではない演目を聴きたかったのが正直なところ。もう少し複雑でロマンティックな音楽(シューマン&ブラームスの交響曲全曲チクルスなど)で、遠くない再来日を待ちたい。
by mamebito
| 2018-07-28 17:33
| コンサートレビュー
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