2017年11月10日(金)18:30~ シャネル・ネクサスホール
Vn.石上真由子、伊東真奈、土岐祐奈 Va.大山平一郎 Vc.加藤文枝、笹沼樹 Pf.永野光太郎
♪シェーンベルク/弦楽四重奏曲 ニ長調
♪フォーレ/ピアノ四重奏曲第1番
ボストン響→ゲヴァントハウス管と続いた連夜の私的音楽祭のトリは、CHANELの室内楽。過去2回は優秀な若いチェリスト、伊藤悠貴さんと上野通明さんを初めて拝聴する好機になった。今回は、ヴィオリストであり指揮者でもある大山平一郎氏と若手演奏家の四重奏プログラムを楽しんだ。
まず今回も、気になっていながら実演に接する機会がなかった若い優秀なチェリストを聴けたことが嬉しい。シェーンベルクを弾いた笹沼さんはたいへんな長身、チェロを軽々と奏でる様子はゲルマン人のようで頼もしかった。次いで、フォーレを奏でたこの日のベストドレッサー加藤さんは、演奏においては力のこもった男っぽい音色とヴィブラートをお持ち。もちろん美しい音色ながら、フォーレのデモーニッシュな側面がきちんと表出されて好ましかった。終演後の銀座界隈で偶然すれ違った時に、感想をお伝えすればよかった。
Vnの女性陣も見目に若々しく、シックな装いながら華があるのがシャネルらしかった。お三方ともお名前は拝見したことがあったので、それぞれの個性を拝聴できたのは嬉しい。中でも、しなやかで音楽が素直な伊東真奈さんのヴァイオリンが好みだった。弟さんがチェリストの裕さんだと終演後に知り、ご姉弟で好きなタイプのアーティストであることが微笑ましく嬉しかった。
作品としては、シェーンベルク若書きの番号を持たない弦楽四重奏曲を初めて実演で体験できたことが収穫だった。作曲家初期のロマン派的作風ながら、調性を逸脱したい気配が随所に感じられ、聴いていて良い意味でうずうずしてくる。ドヴォルザークのような旋律で一見平易に聴こえるのに、厳しい転調や跳躍が散りばめられているので、演奏難度は高く燃費が悪い曲に思われたが、伊東・土岐・大山・笹沼のカルテットは集中力高い熱演で客席を湧かせた。