タグ
レビュー(602)
オーケストラ(412) LFJ(76) ピアノ(62) 室内楽(58) アマチュア(52) チェロ(50) 都響(44) 弦楽四重奏(44) N響(36) CD(35) 東響(28) 新日フィル(26) 交響曲(23) ヴァイオリン(19) 以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
お気に入りブログ
外部リンク
記事ランキング
検索
最新の記事
ブログジャンル
|
2017年10月29日(日)14:00~ 第一生命ホール ウェールズ弦楽四重奏団 ♪ハイドン/弦楽四重奏曲第41番 ♪ベルク/弦楽四重奏曲 ♪シューベルト/弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」 ♪ハイドン/弦楽四重奏曲第1番「狩」~第3楽章(アンコール) 日本を拠点に活動している気に入りのカルテットが3団体ある。楽遊会、関西、そしてウェールズだ。録音や動画で楽しませてもらっていた男子校カルテットを、初めてLiveで拝聴した。 今の世の中、足し算や掛け算がもてはやされることが多い。数や量は多いこと、規模は大きいこと、経年変化は右肩上がりが良しとされ、そのための積み上げや相乗効果が当たり前の善として語られる。音楽はそこまで偏っていないものの、同じ傾向にあるように思うが、ウェールズQは足し算や掛け算と同様に引き算も重視して演奏を作っているように聴こえる。2017年にリリースしたベートーヴェン2番&12番の録音でも、往年の名カルテットの逞しかったり、雄大だったり、カンタービレ溢れたり、何かと増し増しの演奏とは一線を画していた。 この日も、どの作品においても、例えば4人がより小さい音に集合したり、ほぼ完全にパラレルに聴こえてきたり、どこかに必ず引き算の要素を感じる演奏が展開された。その度に、流れてくる音楽に何となく耳を任せているだけでは済まず、舞台にグッと引き寄せられることになる。スピーチやおしゃべりでも、ふと声のトーンを落としたら、「え、なに?」と耳を傾けたくなるように。そのような演奏スタイルを、日本のオーケストラで活躍する演奏者個々を生かしながら、ほぼ完全に同じベクトルで実現していることは特筆に値するのではないだろうか。テンポが揺れても一つの楽器のように動くことを横のしなやかさ、音量バランスや声部の抜き差しを自在に可変できることを縦のしなやかさとしたら、彼らはまさに縦横無尽に音楽を構築する。その繊細なフレキシビリティは、常設カルテットの中でもウェールズQならではの醍醐味だと思った。 特に感銘を受けたのは冒頭のハイドンだった。鈴木秀美さん率いる楽遊会Qのハイドンが理想系には違いないのだけれど、それとはまた違ったアプローチで、ウェールズQのハイドンは極めて面白い。全ての音が聴こえる上に、ロマン派に比べて音符が少なく筆致が透徹している分、全ての音に必ず何らかの意味や方向感がある。しかも、中身がある音ばかりではなく、敢えてのっぺらぼうの、空っぽの吹き出しのような音を提示して「どうぞ客席の皆さんでご自由に埋めてください」と投げかけてくる時もあるから楽しい。1音1ヴィブラートたりとも疎かにせず、もちろんそこにはノンヴィブラートやちょっと無機質な音という選択肢も含まれることになる。そんな繊細な小さな差異の1つ1つが、広いホール空間の色彩感を微妙に変えていく。大きく強くて華やかな音で空間を満たすこととは逆の発想の方が、むしろ音楽の本質や演奏芸術の面白さを伝えることに成功するのかもしれない。その意味で、彼らは録音よりもライヴでこそ聴きたいカルテットの筆頭だと思った。
by mamebito
| 2018-01-23 00:06
| コンサートレビュー
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||