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2015年12月4日(金)19:00~ 浜離宮朝日ホール
Vc.ミクローシュ・ペレーニ ♪J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲第1番、第5番、第4番、第3番~プレリュード、第6番~アルマンド 自分がライヴで接した中では、一番状態が良いペレーニを聴けたかもしれない。第1番は残念ながら開演に間に合わなかったものの、残りの2曲とアンコールを聴けただけでも十分に幸せだった。 2007年11月30日に武蔵野で聴いたペレーニの無伴奏は、この日と同じバッハの5番に、ヴェレシュ、リゲティ、コダーイというお国ものを並べたプログラムだった。その冒頭の第5番、音程が不安定な上に、途中でおたまじゃくしが飛んでしまったのか、それっぽい下降音階で数小節を埋める荒業に耳を疑った。その衝撃が強かった上に、チケットが高価になる巨匠のライブからはしばらく足が遠退いてしまった。その後、神様のような演奏家でも、ボタンを掛け違った演奏をしてしまうことがあるのだと納得するまで少々時間を要した。 この日のペレーニは、ほとんど何もかもがしっかり噛み合っていたのではないだろうか。ご自身のコンディションも、楽器のコンディションも、会場との相性も、客席の人たちが作る空気感みたいなものも。「精神性」という言葉は、大上段なうえに曖昧で好きではないのだけれど、この日のペレーニの演奏には、物理的なサウンドの良さを超越して精神的な変容を促される心地がした。 第5番は、当然2007年のような創作はなく(笑)、物理的な音符の再現に隙がなかった。しかも、重苦しいハ短調の楽曲をインテンポで毅然と奏でつつも、単に厳しいだけではなく救いがあるというか、懐が深くて安心する演奏だった。決してインパクトはないし説明的ではないにもかかわらず、どんどん音楽に惹きこまれていき、勝手ながら演奏者と演奏に自分が一体化していく感覚があった。第5番を聴き終えて休憩に入ると、第1番を聴き逃した残念さや急いて会場についた感情が嘘のように消え失せて、満たされた気持ちに整えられているのだった。 第4番は第5番よりも動的に演奏され、舞曲色や民謡色が強い楽曲に適った精彩があふれた。目を瞑って奏でるペレーニの表情は、いっそう笑顔に。プレリュードの終盤やクーラントには若々しい勢いを感じ、老いて枯れるわけではない巨匠の芸の多彩さを思い知る。サラバンドは、5月のLFJで聴いた鈴木秀美さん珠玉のアンコールに負けず劣らず、テンポが絶妙で豊か。ブーレⅡは、筋が通っていながらもダンサブルで、楽しそうに体を揺らす巨匠の姿はチャーミングですらあった。これほど終わってほしくないと思ったジーグは久しぶりだったかもしれない。会場の、騒がずも熱を帯びた拍手は、この演奏が多くの人を幸せにしたことの証だと思った。 おまけは第二夜の組曲から2曲をサービス。颯爽とした流れの中にストーリーを感じるプレリュード、センチメンタルに過ぎず素材の滋味を提示したアルマンド、どちらも出色のアンコールだった。
by mamebito
| 2015-12-31 02:14
| コンサートレビュー
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Comments(2)
Commented
by
morpheus-cello at 2015-12-31 16:43
今年の締めくくりは無伴奏チェロ組曲! 何だかとっても嬉しいです♫
今年もお世話になり、ありがとうございました。 これからも記事&某所のつぶやきを楽しみにしております。 良いお年をお迎えください。
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Commented
by
mamebito at 2016-01-01 22:35
>morpheus-celloさま
いつもありがとうございます! 実は2015年の宿題がまだ残っているので、正月休みの間にアップしたいと思っています。 こちらこそ、新年もどうぞよろしくお願いいたします。
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