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2015年9月14日(月)19:00~ ヤマハホール
Pf.ニコライ・ルガンスキー ♪フランク(バウアー編)/前奏曲、フーガと変奏曲 ♪シューベルト/ピアノ・ソナタ第19番 ♪グリーグ/抒情小品集第1集から「アリエッタ」、同第3集から「蝶々」、同第8集から「トロルハウゲンの婚礼の日」 ♪チャイコフスキー/ピアノ・ソナタ(大ソナタ) *****以下、アンコール***** ♪メトネル/忘れられた調べ~カンツォーナ・セレナータ ♪ラフマニノフ/楽興の時第4番 ♪カプースチン/インテルメッツォ ♪チャイコフスキー(ラフマニノフ編)/ララバイ ♪ショパン/ワルツ第7番 ルガンスキーは大好きなピアニストの一人ながら、リサイタルを聴く機会がなかった。2004年に聖響さん+東フィルと弾くラフ3で驚愕して以来、デュトワ+N響とのプロコ、フルシャ+都響とのショパン、最近では広上+京響とのラフ2など、コンチェルトには接して来て、この日は念願のソロを、それも300席の小空間で間近に聴けるとあって、期待が膨らんだ。 感想を一文で表現するならば「前後に大きく揺さぶられたリサイタル」だった。どういうことかと言うと、内省的な2曲を並べた前半では舞台の内へ内へと吸い寄せられ、華やかな後半とアンコールでは舞台から圧倒されのけぞってしまいそうで、その振れ幅が非常に大きく感じたということだ。 ロマンティックな第1曲が印象的なフランクは、やりすぎると安っぽい香水のような旋律に堕ちてしまう。ルガンスキーの演奏には、以前感じた“帝政ロシア感”とでも言えそうな品位が満ちていて、同じパヒュームでも市場に出回らない秘蔵の香気をまとったような印象を持った。シューベルトは、内省的とはいえリリシズムよりも厳しさが勝って聴こえた。透徹したタッチで、内へ内へと突き進むようなD.958。その勢いに、ルガンスキーの指先へと吸引されていくような感じを覚えた。時に峻厳ですらあるシューベルト。彼の演奏をもっと聴きたいと思った。 後半は華やぎが支配する。グリーグは、独特の土っぽさが薄く、ソフィスティケートされて聴こえた。プレトニョフのアルバムに近い印象。これもフランクと同じく、どうにかすると恥ずかしい、ダサい音楽になってしまうわけだけれど、ルガンスキーにそのような心配は無用。旋律とリズムの妙を楽しんだ。そして、この日最大の収穫はメインの大ソナタ。20年近く前に彼が日本のレーベルに録音した演奏を聴いて、正直ピンとこない曲だったのだが、ライヴのおかげか演奏のおかげか、作品の力に圧倒されるばかりだった。交響曲で言えば2番・3番・4番辺りの響きや旋律感が、隙間なくぎっしり詰め込まれており、情報量が豊富だ。それは、現在のルガンスキーが作品を知り尽くしていて、作品の魅力を余すところなく顕にしてくれたおかげだと思った。しかも打鍵は鮮やかで、今までの3曲にも増して瑞々しく生気にあふれていた。もしかしたら、この作品を聴く演奏家として、彼は現在最右翼のピアニストなのかもしれないと思った。今聴くことができるピアノ音楽芸術の最高峰をたっぷり浴びて、久しぶりに深く満たされた。 これで終わりではない。続いて、エンターテインメントとしてのピアノ音楽の妙もたっぷりと味わった。最後には、困り顔で仕方なく鍵盤に向かう振りを見せながら奏でてくれた全5曲は、それぞれに色彩の異なる小品。3曲目のカプースチンでは、鮮烈なテクニックとスピードがすさまじく、エキサイトしクラクラした。彼の追っかけ女子には、卒倒した人もいたのではなかろうか。有名なショパンのワルツ、普段は好んで聴かない曲だけれど、彼の演奏からは今まで気付かなかった諸相が浮き立ってきて、他方でショパンにまつわるサロン臭あるいは私小説臭がスッキリと消臭されていて、快く受け入れて浸ることができたのだった。
by mamebito
| 2015-10-11 23:18
| コンサートレビュー
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