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2013年8月30日(金)19:00~ かなっくホール
Vc.松岡陽平、Pf.松岡優、Sop.松岡多恵 ~プレ・コンサート~ ♪フォーレ/ネル、リディア、私たちの愛 ♪林光/四つの夕暮れの歌 ♪小林秀雄/落葉松 ~メイン・コンサート~ ♪J.S.バッハ/ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第3番 ♪サン=サーンス/組曲(前奏曲、セレナーデ、スケルツォ、ロマンス、終曲) ♪プーランク/チェロ・ソナタ 日本最高の弦セクションを有する都響のチェロパートを長年支え続けている副首席奏者、松岡陽平さんのリサイタル。ピリオド楽器にも通じ、イッサーリスを敬愛されているその演奏スタイルは、間違いなく私の好み。弾き姿も力が抜けて柔らかく、勝手にお手本にしてきたのは以前にも書いたとおりだ。 ここ数年、フランスに留学されたご子息、優さんとのデュオを横浜市鶴見区近郊で催されてきた。今年は東神奈川駅前のかなっくホールで、地元の音楽ファンや関係者からの篤い拍手が会場を満たした。 血が繋がっていると必ずしも音楽的に合う、とは限らない。しかしながら松岡親子は、音楽的に自然と寄り添っているように感じられて、聴いていて心地よい。インテンポ基調のバッハでも、表現上の微かな揺らぎがほとんど一致しているし、各作品とも極度に集中せずとも毎々のザッツがピタリと合うのである。「合う」といっても、答え合わせ的に正しいという意味ではないし、合奏精度至上主義を唱えるつもりもない。力みなく自然と「合う」ことの美しさ、そこに漂う雰囲気の柔らかさは、表現上の美点の1つに違いないと思うのだ。少なくとも、この日のデュオは緻密で美しく「合って」いた。都響の弦楽合奏に覚える美感に近かったと思うのは、私の先入観だろうか。 また、繊細で滋味ある音色を湛えた父上の音楽を、巧みに支えた優さんのピアノが出色。粒が立ち、極端な味付けがなく、最小限のルバートやタッチの差異で滑らかな表現を施していく、早熟した音楽性と技量の持ち主と見た。特にプーランクのソナタが素晴らしかった。作曲者独特の、突拍子もない跳躍や突然の音量変化が全くあざとくない。何だかバッハのように一音一音に必然性を感じるのは、優さんがタッチ1つ1つを磨いて弾いているからだろうか。この日はデュオで後方支援にまわっていたようなので、いずれソロでも彼のピアノを聴いてみたいと思った。 演奏もさることながら、プログラムが秀逸。毎年取り上げてきたサン=サーンス作品から、今回は珍しい「組曲」が紹介された。これがなかなかの名曲。前奏曲はチェロが終始アルペジオで物憂い叙情を奏で、その和声が続く4曲を通底で支配する。途中の技巧的な小品はアレグロ・アパッショナートを想起させて鮮やか。終曲のクライマックスで、前奏曲のアルペジオが回帰する際のさりげない美しさは、さすが天才の所業といったところ。取り上げられる機会が少ない作品に、良質な演奏で出会えたことは貴重だった。 なお、開演前20分程、ご令嬢の多恵さん(ソプラノ)と優さんによるプレコンサートも催された。しっとりとした声質の、ダイナミクスレンジの広い歌声に惹かれた。中でも林光は作品の叙情と声色がぴったりで、会場の空気が香るような歌唱だった。お父様が「そろそろプレとメインが逆になるんじゃないか」とトークで笑いを誘っていたが、逆と言わずご家族全員で素晴らしい本編を構成できるのでは、と。次回の企画も楽しみだ。 ところで、これだけ音量的にも表現的にも繊細な演奏だったのだから、譜めくりの方の椅子が起立着席の度に軋むのは何とかならなかったか・・・。他の椅子がなかったのかもしれない、理由は存じ上げないけれど、繊細なチェロのスピッカートやピアノの弱音に、椅子の軋みが容赦なく覆いかぶさるのには集中を殺がれ、やるせなかった。んーもったいなかったなあ。 トップの画像は、チラシがなくプログラム冊子もテキスト1枚紙だったので、代わりにかなめさん*を。え?ご存じない?(笑) *かなめさん・・・かなっくホールの案内キャラクター
by mamebito
| 2013-09-06 23:46
| コンサートレビュー
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