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2012年11月26日(月)19:00~
サントリーホール マリス・ヤンソンス+バイエルン放送交響楽団 ♪ベートーヴェン/交響曲第4番、同第3番「英雄」 ♪シューベルト(ティエリオ編)/「楽興の時」第3番(アンコール) 2012年来日オーケストラ公演の白眉と目されていた本チクルス。全公演をバイエルン放送とNHKが収録するなど、注目度も期待を煽るには十分だった。確かに、高度に完成された音楽だった。 とにかくオーケストラが素晴らしい。特にBRSOのチェロセクションは、数多のオーケストラの中で最も好きかもしれない。輩出されるソロ・チェリストがことごとく好みであるし(ウェン=シンに、この日トップだったクリンガー、等)。力強さと柔軟性を兼ね備えた・・・と言葉を並べたら平凡だけれど、これほど高次元で昇華したオーケストラは数える程しか知らない。前回来日のブラ2とチャイ5同様、見事に練り上げられたベートーヴェンは美しさの極みだった。 両交響曲とも、採用したスコアのバージョンが判別できない程、ヤンソンスが微に入り細に入り合理的かつスムーズに再構築していたように聴こえた。特に英雄は、各楽章の中でクライマックスを頂点としてストーリーが分かり易く形作られていて(特にTimpやTpの最強音の扱い方)、マエストロの解釈が明確に伝わってきた。葬送行進曲の前向きなテンポと適度なデフォルメなど、現代的なセンスも心地よくお洒落だ。おそらく、仮に初めてこの曲を聴いても、エロイカがどういう聴き所を備えた作品なのか、非常に掴みやすく親しみやすい演奏だったのではないだろうか。 そうしたヤンソンス節を、極めて繊細に高い完成度で再現していくBRSOには驚嘆するしかない。tuttiの響きから木管のソロ、Timpの一打に至るまで、どこを切っても音楽の味わいや上品な美質を感じさせる。ただ・・・誤解を恐れずに言ってしまうと、これだけ楽団が優れていれからなおさら、ヤンソンスの作り込みが過剰に感じられてしまったのは私だけだろうか。 もちろん、マエストロとの関係性の中で、これだけの演奏が可能なオーケストラが出来上がっていることは承知の上である。それでも、この自然で分かり易く解きほぐされた音楽の構築が、巧みに自然さを装った非自然のように聴こえて、どうも素直に身を預けられないのだ。妙なたとえだけれど、ヤンソンスは言わば「管理された大自然がウリの高級リゾート」で、それはそれでたいへん快適でラグジャリーなのだが、本来の大自然はもっとヒトの手垢にまみれていないのではないか、といった疑念をどこかで抱いてしまうような・・・。 ・・・こんなひねくれた事を言うのは少数派かもしれないが。むしろ、このコンビの凄さを最も体感したのはアンコールだった。楽興の時が、一人で弾くピアノよりもずっと自由に微細なニュアンスを伴って演奏されたのだ。ヤンソンスはオスロ時代然り、VPOとのニューイヤー然り、アンコールや小品における即興的な愉悦の表出や演出に、最も惹かれることが多い。物故者では、カラヤンやベームの録音にそのような傾向を感じてしまうのだが、これはもう好みの相違なのだろうか。ともあれ、鳴り切った弦が繊細に紡ぐ合奏の後味を反芻しながら、快く会場を後にした。 ただ1つ残念だったのが、この日の座席。サントリー2階席センター、通路以降の後方席が苦手なことは承知していた。非常に溶け合っては聴こえるが、直接音が少なすぎて拡散した響きばかりが勝ってしまう、と感じる。特に音量が大きくない楽団や編成では物足りない結果に終わってしまいがちだ。BRSOならばこのエリアでも十分に楽しめると思ったのだが・・・1stVn14型のタイトなベートーヴェンは、声部が薄い部分は清冽なものの、全奏であればあるほど響きが混濁し茫漠としてきて、舞台上の輝かしい音楽を直接堪能するには至らかった。前日のkitaraのアコースティックが素晴らしかっただけに、そして名門楽団の完成度高い演奏が繰り広げられただけに、一段と音響の物足りなさを残念に感じる結果にはなってしまった。
by mamebito
| 2012-12-29 20:00
| コンサートレビュー
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