タグ
レビュー(602)
オーケストラ(412) LFJ(76) ピアノ(62) 室内楽(58) アマチュア(52) チェロ(50) 都響(44) 弦楽四重奏(44) N響(36) CD(35) 東響(28) 新日フィル(26) 交響曲(23) ヴァイオリン(19) 以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
お気に入りブログ
外部リンク
記事ランキング
検索
最新の記事
ブログジャンル
|
2012年6月18日(月)19:00~ サントリーホール
大野和士+東京都交響楽団+Vn.庄司紗矢香 ♪シェーンベルク/浄められた夜 ♪シマノフスキ/ヴァイオリン協奏曲第1番 ♪バルトーク/管弦楽のための協奏曲 時々、欧米の楽団を彼の地で聴いてみたくなる。ドイツやフィンランドでそういう旅をして、無論充実していたわけだけれど、仮に音楽を聴くことだけを考えれば、しばらくは日本で満足かもしれない・・・と、この日は思った。リーマンショックと震災を経て減ったとはいえ、海外の演奏家が多数来日し自分で現地に行くよりは手軽&安価に聴けて、日本にいるピリオド系の皆さんは最先端で、そして世界一級の都響を定期的に聴けるのだから。 都響贔屓にも程がある?いやいや、この日と翌日の定期はちょっと別格だったのだ。個々人の好みの相違を越えて訴求するような突き抜けた演奏が展開されて、それは日本の定期演奏会ではほとんど感じたことがないほど圧倒的な充実感だった。 特にオケコンの完成度と密度の高さは出色。第1楽章のフィニッシュで一部の金管が鳴らし損ねたハプニングはまさに“玉に瑕”(minamina様によると6/19東京文化では完璧に修正されていた由)。玉条の都響アンサンブルは身がぎっしり詰まって情報量豊富、しかも「整理整頓」や「透明感」というレベルを超えてどこまでもクリアだ。管打のソロもデコボコがなく極めて高水準。前任のデプリースト氏が「フィラ管のようなサウンドを目指したい」と述べていたが、奇しくも退任数年を経てフィラ管を連想させるような伸びやかでブリリアントで鉄壁のアンサンブルに近付いてきたような印象を持った。 大野さんのタクトはリヨン来日の時に比していよいよカリスマの域、一段と音楽の濃度が高まった印象を受けた。オケコン両端楽章は前向きのテンポに只ならぬ意志を感じ、ふとしたパウゼにも張り詰めた意識の存在を感じる。対の遊びの金管合奏に遠望な米国叙情がにじみ、悲歌の歌いきりが鮮烈かつノーブルな様など、表情が迫真でしかも多彩だ。それは浄夜でも然り。都響弦セクションの面目躍如、広い表現幅と懐深い音色を引き出して、アタッカの30分を全く長く感じない濃密な表現を聴いた。 そして庄司さんも絶好調!だったように聴こえた。ショスタコの時と同様、大規模な楽団を突き抜けて聴こえる手抜き無いパフォーマンスに今回も瞠目だったのだが、加えて音色がなんと妖艶なことか!確かに、2年前に聴いたプロコVn協2番で既に音色表現の進化の端緒を聴いていた気はする。しかしながら、最初の一音で一気にホールの空気を艶かしく塗り替えるような懐深い術を既に心得ていらっしゃったとは・・・。大野さんによって微に入り細に入り彫刻された楽団との一体感も絶妙。録音・実演が多くは無い同曲としては、滅多に聴けない名演奏に違いなかった。 とにかく、この日は都響のアンサンブルに圧倒された。当団の緻密な合奏は有名で言うに及ばないけれど、その“合う”ことの次元が巷の楽団と一線を画すると思うのだ。以前、都響にエキストラで出演した弦楽器奏者の方が、古参団員の方から「ウチのピアニッシモは他とは違うんだからね!」と厳しく指導された、という話を聞いたことがある。それは、物理的にダイナミクスレンジが広いという意味ではなく、一体性が高く芯まで意識の通ったppを必要とする、という意味だったのだろうと想像している。つまり、弦のtutti一人ひとりまで楽譜と合奏に深くコミットすること。その結果、オケとして単に合致している(合う)以上に一同に会している(会う)響きがして、さらに言えば作品や作曲家にきちんと対面している(逢う)ような求心力が演奏に備わるのではないか、と勝手に思っている。 もちろん、作品やタクトを振る人との相性、個々人や楽器のコンディション等々で、常にベストな演奏が繰り広げられるわけではないことを承知の上で・・・この日の演奏は手放しに絶賛したい。はい、都響贔屓ですが、何か?(笑)
by mamebito
| 2012-06-29 02:54
| コンサートレビュー
|
Comments(2)
いやいや、都響贔屓抜きにして(私も都響好き)この日(そして次の日)のと今日は世界水準でした。日本にこういう演奏ができるオケがあるのを、誇らしく思ったぐらいです。多分、私よりも海外での演奏会経験が豊富なmamebitoさまがそういうのだから、都響の水準は並じゃないですよ。ほんとに。
そして庄司さん。まさに最初の音でホールに芳醇な香りを行き渡らせる、楽器との対話がうまく行きつつある彼女、またこれからすごい演奏を聴かせてくれると思います。 大野さんの指揮がまた素晴らしかったですね。大野さんが振ると旋律がよく歌います。これが都響の弦楽器と非常にうまく融合するのですよね。都響の演奏会、ますます目が離せなくなりました!
0
Commented
by
mamebito at 2012-06-30 23:49
>minamina様
都響贔屓は、とにかくこのオケのキャラと弦が大好きなので、けっこう盲目かもしれません(笑)。 庄司さん、また都響と共演してくれないかなあ、と色々妄想しています。次は何を聴きたいだろうかと。ギルバート+NDR響依頼のブラームス、それとそろそろベートーヴェンの協奏曲を、瑞々しさと円熟が同居したような現在の彼女で聴きたいなあと思っています。
|
ファン申請 |
||