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2012年2月17日(金)19:00~ サントリーホール
フランソワ=グザヴィエ・ロト+ バーデンバーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団 Pf.萩原麻未 ♪ラヴェル/ピアノ協奏曲 ♪サン=サーンス/トッカータ(アンコール) ♪マーラー/交響曲第5番 ♪プロコフィエフ/バレエ音楽「ロメオとジュリエット」 ~騎士たちの踊り(抜粋)※(アンコール) 年始の宣言どおり、過年度よりも鑑賞ペースを抑え気味の2012年。ただ、blog更新まで合わせてスローペースなのは我ながらよろしくない。音源や楽器のことも徐々にエントリーして行きたいところだ。 とはいえ、この週末は久々に期待のオーケストラ公演が2題。その1つがロト+SWR響。楽団は、2008年にベルリン芸術週間(Cond.カンブルラン)で聴いたメシアンとブルックナーが素晴らしく、まさに待望の来日。ロト氏は同じく2008年、LFJでレ・シエクルと奏でた「大地の歌」(室内オケ編)が鮮烈で印象深かった。ジュネコン優勝の萩原さんを優勝曲のラヴェルで聴けるのも嬉しい。 いやが上にも期待は膨らんだのだが、マラ5は意外な演奏に少々肩透かしを食った心地だった。従前のロト氏からは想像できないほど、整然として穏やかなアプローチだったからだ。 もちろん、感傷に溺れず内声域を適度に浮かび上がらせるロト氏の手腕には感心。いわば、爛熟したロマン派の延長線上よりも未来(新ウィーン楽派辺り)からの視点で、外は禁欲的に見せかけて内からパトスとエロスが滲み出るような狙いだったのかもしれない。しかし、そのように頭では推論を講じて共感できても、直感的な悦びやハートの震えが何か不足する。そのように感じてしまう時点で、巷に溢れる情熱的で分かり易いマラ5演奏に馴らされてしまっている証であって、ロト氏はそうした巷間への警鐘を込めて、過剰な情念を廃しピュアなスコアをさらけ出して聴かせたのかもしれない。ただ、仮にそうだとして、理知的なアプローチを頭では理解できるのだけれどハートの方が…という堂々巡り。 むしろアンコール、甲高い「ありがとうございました!」の後で拍手をかき消さんばかりにぶつけたロメジュリの方が鮮烈で、音楽的輝きに満ちていた。Sax部分は木管群を重ねるのかと思ったらFgだけで代用。抜群の推進力とクリアなサウンド、中間部の前向きなテンポ、木管オクターブの演劇的にすら感じる強調等々、表現意欲にも事欠かず。まさかマラ5の後でアンコール、しかもこの曲をやる意図が不明で、さらに迫真の演奏のおかげでこれから両家確執の悲劇が始まらんばかりの雰囲気をホールに再構築した状態で演奏会はお開きという…これは確信犯ロト氏の愉快ないたずらに違いない(笑)。 ブリリアントでエッジの効いたSWR響のキャラクターはやはり好ましかった(2008年ほどの切れ味は無かったが…)。編成は16型+α(1st17本、Vc11本、Cb9本、等)でたいへん鳴りがよく、それでいてスマートに統制が取れていた。このテイストは如何にもドイツ中堅放送楽団の雰囲気。甘みのないクールな弦の音色は特に魅力的だった。Tpソロは明るく豊か、第3楽章のHrソロは指揮台の脇に立つスタイル。引き締まってパンチが効いたパーカッションはSWR響の面目躍如といったところか。ただ一方で、時々間延びするテンポの影響もあってか、管楽器の精度が今ひとつ冴えない時があったことは残念だった。 ともあれ、この日の白眉は前プロのラヴェルだろう。「日本人ながら…」といった無意味な偏見など一切抜きにして、久々にラヴェルが瑞々しく香る演奏を聴いた気がした。 萩原さんのタッチは爽やかで、色がある。普段愛聴しているグールドやルガンスキーやエマールといったクールなピアニストとは異なる粒立ちが、甲乙付けがたく心地よい。そして、テンポがどれだけ音楽の色を決定付けるものか、この人のピアノを聴いていると強く実感された。第1楽章の前向きで転げない絶妙の案配が繰り出す上品なワクワク感。ややゆったりした第2楽章は、強弱やルバートよりも根底に流れるテンポの妙が驚くほど琴線を揺らすので、2小節目であっという間に涙がにじんだ。終楽章は馬力の不足を感じる向きもあろうが、むしろ無理して汚い打鍵を弄するよりずっと好ましい。終楽章の残りわずかで若干崩れて、アンコールも勢い余って粗っぽかったのはご愛嬌。かなり好みのタイプの、楽しみなピアニストにまたまた出会ってしまった。 楽団もマーラーよりラヴェルの方が精彩に富んだ。パーカッションを中心に引き締まったアタックが小気味よい。弦は中声部が豊かでなんとも味わい深い和声を湛える。木管は息が通い伸びやかで、第2楽章はどの楽器もピアノと一緒になって共感に満ちた歌を展開し、至福のひと時だった。 ※アンコールのロメジュリ、ホールの告知は「騎士たちの踊り」だが、そうだとすれば一部カットして演奏したのだろうか?一方で、組曲の「モンタギュー家とキャピュレット家」からイントロをカットしたようにも思えたが、だとすれば中間部のスコアが異なる…。詳細を判別できなかったので、ホール告知曲名に「(抜粋)」を付した。
by mamebito
| 2012-02-18 00:58
| コンサートレビュー
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