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2011年10月20日(木)19:00~
東京オペラシティコンサートホール スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ+ ザールブリュッケン・カイザースラウテルン ・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団 ♪シューマン/交響曲第4番 ♪ブルックナー/交響曲第9番 いい演奏だった。興奮や愉悦といったはっきりした心の震えではないので、なかなか言葉に表しにくいのだけれど。ひらめきや気勢ではなく、長年かけて磨き抜いたものの粋のような音楽だったと言えるだろうか。特にブルックナー。度々引き合いに出す、ヴァント最後の来日公演初日の痺れる演奏とはまた違うカタチで、身体中に染み渡る音楽体験だった。 おそらくマエストロも楽団も調子は良かったのだろう。後半では指揮台上の鼻歌が3階最後列まで届くほど、スクロヴァチェフスキは“乗っていた”ようだ。微に入り細に入り彫刻された独特の声部バランスとアゴーギグは、もちろん局所的に新鮮な刺激になるわけだけれど、それは楽章全体あるいはフレーズ全体としても極めて説得力を持つので、感心したり恍惚とすること然り。 特別エクセレントなわけではない楽団の技術面ギリギリまで迫る速めのテンポ設定。特に第2楽章はスリリングだったが、堅固な作品構造とピンっと筋の通った緊張感が乱れることはなかった。第1楽章では時々ホルンなど目の粗い部分もあったが、第2楽章以降は尻上がりに楽団のポテンシャルが全開していった。先日のベルリン放送響のようにふくよかなピラミッド・サウンドも魅力的だけれど、私はこの日のようにブリリアントで、多声部が聴こえるのに絶妙に交じり合う魔法のような響きで造形されたブルックナーが好きだ。 前プロのシューマンは、楽団の鳴りや集中の高まりの点で後半のブルックナーには至らないものの、こちらも極めて練り上げられた演奏だった。第2楽章のVcとObユニゾンのズレはさすがに興を殺がれたが、第3楽章と第4楽章のブリッジにおけるppからffに至る音楽的輝きに満ちた高揚などこれ以上望みようがない表現を聴くことができた。何よりも、シューマンの陽と陰に加えて、そのどちらともつかないような叙情が衒いなく聴こえて来たことは、まさに至芸だと思った。 …このような、演奏の周辺のさらにその周辺から抽象的な言葉を弄するしかないぐらい、この日の演奏は筆舌に尽くし難かった。私の乏しい語彙と楽曲理解では、文章としてその搾乳の一滴ほどしか表しきれない類の音楽体験は久しぶりだった。ただ一介の音楽好きとして、作品と演奏者への畏怖と感謝で心一杯になる、記憶に残るコンサートだった。 ブルックナーのカーテンコールは、楽団がはけた後も何度もマエストロを引っ張り出した。その度にコンミスやメンバーを連れてきて一緒に喝采を浴びる老匠。私は4回呼び出したスタンディング・オベーションをもって、これ以上は蛇足と思い、未だ続く熱狂を背に満ち足りた気持ちで会場を後にした。(その後いつまで続いたのだろう)
by mamebito
| 2011-10-28 00:23
| コンサートレビュー
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Comments(1)
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