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![]() ケント・ナガノ+バイエルン国立管弦楽団 Sop.アドリエンヌ・ピエチョンカ ♪ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲と ヴェーヌスベルクの音楽(パリ版) ♪R.シュトラウス/4つの最後の歌 ♪ブラームス/交響曲第4番 ♪ワーグナー/楽劇「ローエングリン」 ~第3幕への前奏曲(アンコール) ドイツ名門楽団を聴くのは久しぶり。先日のブロムシュテット+N響やインバル+都響にスダーン+東響など、今や日本でもオーセンティックな独墺の響きを聴くことはできるが、彼の地で永きに渡り愛され続ける楽団には、やはり風合いや香りや語感といった点で一線を画する魅力がある。 タクトは大好きなマエストロの一人、ナガノ氏。氏のブラ4はベルリン・ドイツ響との名録音を愛聴しているが、この日の演奏は録音と少々異なる表情を聴くことができ興味深かった。 その相違は楽団の特性を引き出した結果なのかもしれない。リヨン歌劇場やモントリオール響との録音でも然り、ナガノ氏は自己の理想とする音楽を楽団にインストールするよりも、その楽団に備わる美点をインタラクティブに引き出しながら協業の産物をまとめあげるタイプ、ではないかと見ている。 録音ではベルリン・ドイツ響のマッシヴな機能性を活かしてか、比較的前向きなテンポで、重心が低くも極めてクリアで見通しのよい演奏に仕上がっていたと思う。この日のバイエルン国立管は、例えば同放送響ほどエクセレントではないし、ドレスデン国立管ほど音色が高価でもないだろう。けれども、明るいライト系のドイツサウンドや、ピットオケらしい合奏の柔軟性から醸し出される職人的雰囲気が味わい深い魅力だと感じる。ナガノ氏は決して速くないテンポで、楽団の音色特性を引き出しつつ、古典的な構成美をクッキリと描き出していく。といっても鋭角的ではなく、ザッツも発音も角が取れてまろやか(もちろんフランス的な曖昧な柔らかさとは違う)。そしてtuttiの響きが、おそらく和声的に、ものすごく美しいのだ。 マエストロと楽団の間に、十分な全体俯瞰と意思疎通が行き届いているからか、感情過多で暴発するような場面がなく、それでいて作品の泣かせ所やクライマックスではスリリングなまでに表現の深淵を覗かせてくれる(第1楽章コーダ、第2楽章中間部、第4楽章終盤、など)。それもあざとく作為的にではなく、極めてリーズナブルで自然に…。 自然という意味では、前半プログラムも一見ユニークながら理に適ったアプローチ。タンホイザーは、ヴェーヌスベルクの狂乱をパンチよりも色彩感で聴かせる。回帰した彼の有名なメロディは、雄大・壮大に吹奏することなく、極めて抑制的に奏でられた。すると、巨大で扇情的なフィナーレに食傷することなく、弦の分散和音群が心象のごとく移り変わる様が明瞭で、金管の吹奏とまろやかに溶け合う親密な佇まいに新たな美感を見出すのだった。 4つの最後の歌、豊かな歌声で情感をたくましく表現するピエチョンカを、楽団は親密で優しく、さりげなく呼応しつつ包み込んだ。客席の集中力にやや問題があったけれど、むしろ静謐な表現にぐっと引き込まれる理想的な演奏だったと思う。 ナガノ氏のタクトを正面から見たのは初めて。昔、ハレ管を振ったマラ9のVTR放映で憑かれたように没入する姿が印象的だったが、あれから15年近く経て、マジカルなタクトには一層磨きがかかった様子。台上で構えた途端、氏の独特の世界観が一瞬で周囲の空気を変えるような、曰く言い難い強力なカリスマを感じた。しかも合奏上の難所ではグイッとドライブしたり明確なキューを飛ばす冷静さに事欠かないのだから、実務上もたいへん信頼できるシェフに違いないだろう。 余談だが、この日の休憩中、残念なことにP7列の男性がレセプショニストの女性に大声で当たり散らし、ホール全体が一瞬凍りつく場面があった。至近で聞こえてしまったので述べると、男性の言い分は100%話にならない呆れたものだった。素晴らしい音楽の前では取るに足らない些事だが、明らかに一発退場モノの愚行であるし、女性一人に対応を任せてうやむやにしたSPSの危機対応にも瑕疵があったと思う(あの状況は援護必須だろう)。例えばMLBだって、観客がヒットをファウルと誤認して拾得しただけで一発退場でしょ(笑)。
by mamebito
| 2011-10-10 20:28
| コンサートレビュー
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Comments(4)
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ベルリンドイツ響、来日するんですね。先週末ベルリンのフィルハーモニーで彼らのベト7を聴いてきました。予定空いてるしチケットまだあるみたいだからとりあえず行ってみようという軽すぎるノリだったんですが、ベト7があまりによくてぽろぽろきちゃいました。何より日本人がドイツの音楽でドイツ人をノリノリにさせていることがうれしくて(笑)
前半は、その前に時間が余っていてつい飲んでしまったビールの効能(笑)で夢の世界を漂ってましたが、後半は涙は出るわ体温は上がるわで忙しかったです(笑) でも実はこれは今旅行のおまけで、本命のラトル指揮ベルリン国立歌劇場の死者の家からがそれはそれはよかったです。曲の充実度も奇跡的だと思いますが、オケの緊張感と音の密度はメトでは味わえないものでした。メトの約1/3というホールの大きさも奏功したかもしれません。最終日にはシェローもカーテンコールに現れ、これでお蔵入りとなってしまう彼のプロダクションに盛大なブラヴォーが送られていました。 ただもう1つ観たオペラがこれまたヤナの女狐で、ただいま両作品が脳内シャッフル再生されていて困っています…。あれ今どっち?みたいな(笑)
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>TMさん、お久しぶりです。NYは日本の晩秋に近い気温まで冷え込んできたみたいですね。お元気ですか?
ベルリン・ドイツ響は、BPOデビューした佐渡さんのおかげで、前回メッツマッハーと来た時よりも値段が跳ね上がり(苦笑)。私は手が出ませんが、共演に録音も重ねた名コンビのようですね。佐渡さんのベト7って実はあまりイメージが浮かばないのですが、TMさんがそれほどに仰るんだから何かが備わった演奏だったに違いないですね! ところで、ラトルはベルリンでBPO以外の組織も振るんですね。メトには薄い、深刻な叙情が表出されたのでしょうか。お目当てだった女狐も素晴らしかったのでしょうね。オペラは特に、向こうの劇場で観るのと来日引越しで観るのとでは全然違うんだろうなあと、唯一ドレスデンで鑑賞した2公演の経験から想像したりします。 ラトルといえば、3.11直後にBPOから日本人への心のこもったVTRメッセージが感動的でした。「来日して演奏し気持ちを伝える」と明言したとおり、これまでの同コンビ来日にはない特別な何かが宿るんじゃないかと、指をくわえて妄想しています(苦笑)。 ![]()
寒さはそこそこという感じでしょうか。ヒートテックにはすでにお世話になっています(笑)
ラトルは昨シーズンにメトでドビュッシーのペレメリを振りましたが、それがメト・デビューでしたし、客演でオペラというのは実際珍しそうです。フィラ管にはちょいちょい出没しています。ラトルが降った時のメト・オケよかったです! いつもは薄味気味なんですが、とても豊かに音楽的に歌っていて。 死者の日はまめ様の某先輩にお会いできまして、一緒にラトルのサインをもらいに行っちゃいました(笑) 疲れた様子も見せずにこにことフランクな方で、お話ししやすかったです。 そんなメッセージをくれたのでしたら、きっとすばらしい音楽を届けてくれることでしょう。楽しみですね!
>TMさま
某先輩(左の『素顔のベルリン』著者)ですね!大学時代は、O町Y一郎氏による殺人的フェルマータ(笑)に完璧に耐えて聴かせたピッコロの名手でしたよ。 ラトルにも対面してみたいです。たとえサインをもらう一瞬であっても、第一線を行くアーティストのオーラみたいなものを直接感じられるのは嬉しいですよね。ベルリンでは私も、ブレンデルとガン闘病直前のアバドにサインをもらいに行き、しばらく足の震えが止まらなかったです(笑) ところでそのラトルの来日公演は、超高額に加えて凄まじい争奪戦が繰り広げられて即日完売というありさま…もし運がよければどなたかのおこぼれを喜んでお待ちしている今日この頃です。
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