タグ
レビュー(602)
オーケストラ(412) LFJ(76) ピアノ(62) 室内楽(58) アマチュア(52) チェロ(50) 都響(44) 弦楽四重奏(44) N響(36) CD(35) 東響(28) 新日フィル(26) 交響曲(23) ヴァイオリン(19) 以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
お気に入りブログ
外部リンク
記事ランキング
検索
最新の記事
ブログジャンル
|
2011年8月15日(月)17:30~ 浜離宮朝日ホール
Vc.上森祥平 Vn.長原幸太 Va.鈴木康浩 ♪コリリアーノ/ファンシー・オン・バッハ・アリア(1996) ♪J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲第1番 ♪イベール/ギルラツァーナ(1950) ♪J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲第4番 ♪ハーヴェイ/カーヴ・ウィズ・プラトー(1982) ♪J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲第6番 ♪福富秀夫/進め、竪琴の響きの中を(アンコール) 今回3度目(2008年、2010年)の鑑賞となる上森祥平さんのバッハ無伴奏全曲演奏会。今年はこの企画のすごさが一段と身に染みた。いや、「凄」といった近寄り難さを感じる言葉は不似合かもしれない。「極上のホスピタリティの心地よさ」とでも表現するのが一番適切かもしれない。 これほどオープンマインドで、聴衆との間に垣根を作らない名手は稀だと思う。アットホームなアンコール(第1回:プロポーズ/第2回:お嫁さん紹介/第3回:3人の祥)はもちろん親密だけれど、それだけでなく演奏そのものと会場を満たす雰囲気が、既にオープンで聴く人を温かく迎え入れてくれるように感じられるのだ。 演奏は、前回にも増して包容力の大きさが印象的。今年は第二部だけしか聴けなかったが、どこか祈りや誠意を尽くした雰囲気がホールに満ちていた。おおらかで自然体、落ち着いて知性的。細かいことには拘泥せず、深い内省から生まれるのであろう生身の温もりを感じる演奏だった。お人柄がそのまま反映されたかのようなバッハ。 特徴を述べるならば、例えば第4番プレリュードは従来より1つ1つの音が短め。音の空白を活かして、浜離宮の豊かな残響に溶けた分散和音が美しく多彩だった。第6番は、例年の中でも特に渾身の演奏で、まさに祈りの様相。バッハ全6曲に神経を使う小品6曲、体力も精神力もきっと極限に近いだろう中から生み出されたのは、雑念や迷いが捨象された求心的な音楽だった。 組み合わされた小品の中では、ハーヴェイがチェロ表現の限りを尽くして印象的。超ハイポジションと低弦のコルレーニョがそれぞれ天地を現すようで、たいへんスケールの大きい世界観が示された。また、開演前のトークは作品の特徴を端的に私達へ伝えてくれるとともに、渾身の演奏と相まって、温かさの中にもどこかピンッと引き締まったよい緊張感を漂わせるのだった。 今年のアンコール、5日前に無事第一子(男子)をご出産された「ぼくのお嫁さん」とそのご両親は会場にいらっしゃらず。そのかわり、上森さんの音楽仲間である大フィルのコンマス長原さんと、読響ソロ主席のヴィオラ鈴木さんが登場して弦楽トリオを。作品は、孫の誕生を祝い「羊水の中や陣痛まで表現された、かもしれない」という福富秀夫氏による新作初演。これがカッコいい曲で、演奏も鮮やかなこと。このお三方、Fl.高木綾子さんとモーツァルトの四重奏全曲も録音したばかり。そちらも大いに気になるところ。 来年もお盆シーズンに第5回を予定しているとのこと。聴衆も年々増えてきたように見える。次回も楽しみだ。 #何度か訪れていたはずの浜離宮、この日初めて2階席センター最後列で鑑賞したところ、残響の美しさとニュアンスの明晰さが高度に両立していて驚いた。今まで1階や2階バルコニーでは評判ほど音響のアドバンテージがなく不思議に思っていたのだが、2階、しかもセンターがベストポジションなのかもしれない。
by mamebito
| 2011-08-23 23:56
| コンサートレビュー
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||