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2011年6月20日(月)19:25~ すみだトリフォニーホール
![]() ダニエル・ハーディング +新日本フィルハーモニー交響楽団 ♪エルガー/エニグマ変奏曲~ニムロッド ♪マーラー/交響曲第5番 3.12にトリフォニーで彼らのマラ5を聴く予定にしていた。その前日、3.11の渦中で数百人のために演奏されたこの曲は、あの日とその後の記憶に結びついて特別な感情を呼び起こされる方が少なくないのだろう。開演前の水を打ったような緊張感と期待感、“熱狂”とも違う終演後の尋常ならざる喝采(多数の拍手の腕が頭上に上がりスタンディングも)には、久しぶりに鳥肌の立つ想いがした。 第二次大戦中、欧州の劇場では空襲の最中でも決死の覚悟で演奏者と聴衆が集い、異様な雰囲気を備えた演奏が生まれたとともに、「音楽」と「生きること」が極めて密接だったと語り聞く。状況・環境の快適さに関わらず、逆境や修羅場でこそ音楽は濃く深くなり、特別な求心力を備えるものなのかもしれない。それは音楽に限らず、精神活動全般に言えることなのかもしれないけれど。 個人的にはこの日、総武線人身事故に加えて振り替えた半蔵門線が急病人看護で遅延、汗だくで到着したうえ追悼のニムロッドをホワイエで聴く羽目になり、彼らのマラ5はこれほど苦労しないと拝聴できないのか、と妙なドラマを感じた次第(苦笑)。初めて座ったすみトリの2Fセンターは、階下と階上に音を奪われて案外響きが届かずドライ気味。前置きが長くなったが、上記の状況と環境で聴いた限りでは「演奏そのものは後日程の方がよくなるのではないか」という感想を持った。 冒頭Tpは柔らかくも勇ましく完璧。ハーディングは見通しの良いゆったり目のテンポで1つ1つの表現に濃淡を施し、強く惹かれる音楽が展開する。ただ楽団が硬い。カッチリ入ってほしいザッツが怖々しておぼつかなかったり、弦は安全策でトップや前方プルトに任せたり、といった手探り状態が第2楽章までは続いた。また気負ってしまうためか、弦はVcを中心に音程が上ずる人がいるようで濁りが目立ち、管も安定しないパートが見受けられた。粗探しではなく、Ustで生中継もされた特別な公演における緊張や怖れが発現した例示まで。 続く第3楽章はHrが大奮闘。こちらも少々気負ってか音が割れ気味で荒っぽい印象にはなったものの、相乗して楽団全体に生気が横溢し迫真の演奏が展開される。繊細な緩徐部分での濃密な掛け合い方などハーディングならでは。白眉は第4楽章。前楽章までで鳴りきった弦が、クールな中に情熱を秘めたマエストロの音楽をしっかりと受け止める。クライマックスに至っては、爛熟したロマンとは異なる直情的な響きでホールを飲み込んだ。終楽章は楽器間の受け渡しがクッキリと浮かび上がり鮮やか。tutti強奏ではもはやへばって埋もれてしまうパート(Tp等)もあり万全ではなかったが、ハーディングらしい極めて闊達なドライヴ感でフィナーレを鮮やかに決めた。 滅多に聴けない直向きな大熱演は感動的に違いなかった。客席と高度に一体となり盛り上がるカーテンコールも稀で、記憶に残る演奏会になったことも確かだ。ただ何せ上述のとおり力一杯で硬く、本来NJPが持っている清澄なカンタービレや伸びやかな拡がりは薄れていたと思う。これはもう、個人の好みと想い入れの相違でしかないかもしれないが、しがらみから解放されてもう少しリラックスするだろう後日程の方が、本番を重ね練り込まれる部分も相まって最高の音楽に近付くのではないかと思った。
by mamebito
| 2011-06-22 00:34
| コンサートレビュー
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Comments(4)
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こんばんは。マラ5途中からUst見ました。
フレーズの最後がぶちぶちなのはきっと私のPCとスピーカーのせいですが、4楽章の美しさにはうるっとしました。 すみトリ行けなくてもUstとまめびとさんのBlogで雰囲気楽しめました♪ でもニムロッドは生で聴いてみたかった…! 震災当日は演奏会が行われて、聴きに行く予定だった次の日は延期、そしてその振替は人身事故…なんだかすごくたいへんそうですけどハーディング+NJPマラ5の3か月ごしのリベンジ無事聴けてよかったですね! 前半の文章にいろいろ考えさせられました。 WWⅡ前後の音楽に一種の憧れみたいなものを私は持っていて、そういう気持ちが湧くのは(音質とか悪いのに)なんでだろうなあー、ってずっと考えていたんですが、このblogを読んでたぶんそういうことなんだろうなーと気づきました。 そして前記事のプレスラーおじいちゃんうらやましいです。ストルツマンもほんと豪華メンバーですね。 半年前にメネセスとプレスラーのデュオリサイタル聴きに行きましたが、彼の室内楽は素敵ですね。 ちょっと躊躇しましたがこのブログずっと読んできての初コメントしてしましました。それでは。
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人の感情にとって音楽が、魚にとっての水のようになることがあるのかもしれませんね。感情を押し殺さざるを得ない環境でも、音楽の中では感情が自由に呼吸できるというような。
感情が麻痺したような、自分の感情に鈍感になっているような時でも、音楽を聴くとそれが生き生きと蘇ってくることってあります。音楽や小説に没頭している時の方が、ココロが自発的に動いているようなのはなぜでしょうね。 アタマで考えてもゴールできない迷路ですね。 て不思議ちゃんコメントですみません(笑)
>すぴかさん
初コメント&ずっとこちらのblogをご覧いただき本当にありがとうございます! 本当に、ニムロッド聴きたかったです…ホールに入ったときちょうどハーディング入場の拍手だったので残念ながら。旧い録音って、すぴかさんが仰るように、単に「旧き良き時代への憧れ」といった懐古趣味ではなくて、時々そのようなものすごくシリアスに惹かれる部分が魅力だなあと私も思います。苦境にあれば一概に音楽が良くなるわけでもないでしょうが、平和でノホホンとした毎日には引き出せなかった何かがこういう機会に出てくるものなのかもしれませんね。 どうぞ今後もお気軽にコメントくださいね。どうぞよろしくお願いします。
>TMさん
決して不思議ちゃん発言ではないと思いますよ(笑)。たぶん、日常の現実に加えて、震災の自粛モードや節電や何やらで、知らず知らずに感情を押し込めている人は今の日本、特に関東以北では多いんだと思います(私も含め?)。仰るとおり、頭で考えてもまったくゴールできないのですが。 今年の6月はほとんどまるまるハーディングが滞在し、日本ではハーディング祭りだなんだと言っています。今回来日の東京最終公演はエルガーのVc協とベト7、また聴いてきた感想をアップしたいと思います。
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