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2011年6月11日(土)18:00~ サントリーホール
クシシュトフ・ウルバンスキ+東京交響楽団 Vn.諏訪内晶子 ♪ルトスワフスキ/小組曲 ♪シマノフスキ/ヴァイオリン協奏曲第2番 ♪J.S.バッハ/無伴奏Vnソナタ第2番~アンダンテ(アンコール) ♪ショスタコーヴィチ/交響曲第10番 この日の白眉は諏訪内さんの弾くシマノフスキだった。告白すると、諏訪内さんのVnは好んで聴いてこなかった。高潔な音楽性はウェルカムだけれど、表情が硬く音色は神経質に感じられ、まるで入ってこなかったのだ。今回久々にLiveで接したところ、そうした印象はすっかり払拭されてしまった。 線は細めながら、第1楽章のカンタービレが非常に深く引き込まれる。技術に余裕があり乱れを知らず、鬼気迫る気迫と相乗してちょっとお目にかかれない格の違う音楽が展開されていく。昔は神経質で耳に障ったヴィブラートが、所々適度に大きくまろみを帯び、琴線を最適振幅で揺らしてくれる。上述のとおり太いVnではないのでオケ強奏がかぶさると一瞬埋もれるのだが、よく聴くと細いながらも芯の強いsoloが手抜きなく奏でられており、徹底的に磨きこまれたパフォーマンスには感嘆するしかない。アンコールは音符に対して少々神経過敏にも感じられたが、やはり融通無碍で揺るぎない演奏だった。音もそうなのだが、カーテンコールでも笑顔と拍手で楽団を讃えるなど、高潔な中に人懐っこさを漂わせて、各所でささやかれたかつての高飛車なイメージはすっかり影を潜めていらした。ぜひまた諏訪内さんを聴きに行きたい。またウルバンスキによる伴奏が非常に安定していて、線が細めのVnを巧みに浮き上がらせつつ、シンフォニックかつ引き締まった見事な演奏を形作っていた。 そのウルバンスキ、舞台に現れた姿は年齢(28歳)相応の兄ちゃんだが、壇上での落ち着きと自信は既に名匠の貫録だった。小澤征爾さんはほとんどの作品を暗譜で振ることでも有名だが、ウルバンスキも然り。暗譜とよい演奏が常に因果関係にあるわけではないけれど、その上で揺るぎなく柔軟なタクトを振るうことは、楽団員にとってリスペクトフルに違いない。おそらく、圧倒的タレントで楽団を掌握するタイプのエクセレント・マエストロと見た。 それゆえか、自ら思い描く高みに向けて楽団を追い込み、聴き応えのある演奏に仕上がっていた。ただ、スダーンの下でピリオド・アプローチやドイツ中堅楽団的まろやかさを体得してきた東響は、ウルバンスキが描くショスタコーヴィチの厳しさやアイロニーに潜む深刻さまでをも表出できていただろうか。長大な第1楽章は弦のふくよかな響きが美しく音楽的だったものの、快速第2楽章は必死で食らいつくのが精一杯の様子。特に弦は所々グズリと緩む場面があり緊張感を減じた。第3楽章は豊かで力強い響きに悲哀が宿り最も充実。Hrハミル氏は貫録のパフォーマンスだった。第4楽章も大きな破たんはなく、フィニッシュの“ドドスコスコスコ”に至っては一気呵成の勢いも十分だった。しかし、ここまで来たら好みの問題かもしれないが、それ以上に突き刺さる物語もなければ抜群のサウンドを堪能できるわけでもなく、突き抜けた何かが足りなかった、というのは欲張りな感想だろうか。 冒頭のルトスワフスキは、今回を機にNMLで出会った佳曲。一見バルトーク風のもう少し先鋭的な民族色が豊富で、簡潔かつ親しみ易い魅力的な作品。同郷のウルバンスキは、精彩に富むスコアをたっぷりの共感をもって再現した。
by mamebito
| 2011-06-15 22:35
| コンサートレビュー
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Comments(2)
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Sonnenfleck at 2011-06-18 14:11
ご無沙汰してます。
翌日の川崎公演を聴きに行きました。シマノフスキは本当に佳かったですね。私もmamebitoさんと同じでちょっと諏訪内さんを敬遠してたところがあるんですが、また聴きに行ってみたいなと思わせるのに十分でした。あのように込み入った協奏曲を鮮やかに切ってみせる手腕、きっとブリテンなんか似合うんじゃないかなあと思いました。 ショスタコーヴィチ、、12日は第2楽章はちゃんと完成したパフォーマンスでしたが、今度は第4楽章でアンサンブルが「グズリ」と崩れてしまって残念でした。神経の通った繊細な表現が得意なオケなのでしょうが、スタミナがつけばさらに幅が広がるだろう、というのも贅沢な感想かもしれません。
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mamebito at 2011-06-19 00:03
>Sonnenfleckさん
TB・コメントありがとうございます。近しいご感想を拝見して嬉しかったです。 東響は本当に「プチ重厚」な感じですよね。ミューザを2年間失って、特に事務方は大変な苦労があると思いますが、音楽って逆境や修羅場にある方が濃くたくましくなるような気がします。スタミナは邦人の弱点かもしれませんが、いつか重厚から“プチ”がとれる日が来るかもしれませんね。そういえば開演直前の事務方さんの応援依頼スピーチ、簡潔で音楽の邪魔をしたくない姿勢が溢れていて、こういうところも東響さんはいいなあと思いました。 諏訪内さん、ブリテンいいですね!以前ウォルトン聴かれた方が絶賛されていたのできっとはまるはず。あとコンチェルトならばストラヴィンスキーとベルクを聴いてみたいと思いました。
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