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2011年4月23日(土)14:00~ サントリーホール
山田和樹+日本フィルハーモニー交響楽団 Cl.伊藤寛隆 Sop.市原愛 ♪マーラー/花の章 ♪モーツァルト/クラリネット協奏曲 ♪マーラー/交響曲第4番 パンフレット表紙に描かれたインキネンとシベリウスはいない。山田和樹さんが登壇し、愛情や温かさを感じる改変プログラムで音楽を聴く悦びを満喫させてくれた。 マラ4でのマエストロの音楽性、タクトの表現力と安定感には脱帽した。昨年12月に某アマオケに客演して振ったのも同作品、山田さん得意のレパートリーなのだろうか。このカリスマはアラサー世代で明らかに抜きん出ているし、前回聴いた時(2010年11月)から既にまた進化を遂げているように感じた。 全体に響は柔らかい。適度な量感を湛えつつ、快調なテンポで綴られた。第1楽章はpppとfffの起伏を大きくとり、主題パートへのフォーカスも全く理に適っていて立体的。第3楽章の叫びではTimpを激しく叩かせ、相対するように柔らかさを保った弦の底鳴りがとても音楽的。言葉には表しきれないが、山田さんが創る全体ストーリーから様々なニュアンス、マクロからミクロまで、全く嫌味が無く身体へ素直に入ってくるよう。スコアの素晴らしさに奏者の皆さんの想いがしっかり乗り、じわりと心を解きほぐしてくれるようなマーラーだった。 またオケのソリストが大活躍。特に、コンマス木野氏とHr福川氏が圧倒的な巧みさで作品の要所を高みに引き上げた。Ob氏(お名前を存じ上げず…)も美しく表情に富み感動的。Tpや伊藤氏を欠くClも達者だった。日フィルはいつからこんなスタープレイヤー達を抱える楽団になったのか。 ソプラノの市原さん、HPでは美麗なグラビアを前面に押し出し、Jクラシック・アイドルではと懸念したがそれは杞憂だった。華奢な体とモデル顔負けのスタイルは声量や迫力を望めるタイプではないが、適度なヴィブラートと的確な音程で優しく歌い、作品と楽団の傾向ともピッタリだった。 モツのクラコンは、定石といえる解釈が無く極めて難しい作品だと思っている。濃くても淡くても中庸でも容易には決まらない。この日の演奏者達は、そうした作品を丁寧に繊細に温かく奏でた。日フィルの諸刃の剣である透明な弦を、山田さんはボリュームを湛えた響に仕上げ表情を引き出す。Cb2本の小編成アンサンブルを自発的に、時に雄弁に歌わせた。 クラ首席の伊藤さんは、十数年前にコバケン氏とのチャイ5第2楽章で、驚異的に繊細なpppを奏でたのを聴いて以来、最大の信頼を抱いているクラリネット奏者の一人。この日の、丁寧でスコアに語らせるようなアプローチは、氏の類稀な音楽性が磨き続けられている証ではなかろうか。決して訴求力の強い演奏ではなかったのに、聴衆はハートをグッと掴まれて会場は喝采に包まれた。いいモーツァルトだった。 ところで、開演前に理事長の島田氏とVaの後藤氏が、震災を受けた楽団の取り組みとインキネン来日不可の理由を10分ほど述べた。気持ちは分かるけれど、冗長に過ぎたと思う。言葉を超えた共感や想いを伝えられるのが音楽ではなかったか。「私達は音楽家として出来ることを…」と述べるならば、前口上は一言二言に留めてもっと音楽の力に委ねるべきだろう。前向きなスピーチは辟易するほど巷に溢れているし、何よりも今日の演奏が皆さんの想いを雄弁に伝えていたのだから。
by mamebito
| 2011-04-23 23:51
| コンサートレビュー
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