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2011年3月20日(日)14:00~ 横浜みなとみらいホール
下野竜也+読売日本交響楽団 Cl.四戸世紀 ♪J.S.バッハ(ストコフスキー編)/管弦楽組曲第3番~アリア ※東北地方太平洋沖地震の犠牲者と被災者のために ♪J.S.バッハ(エルガー編)/幻想曲とフーガ ハ短調 ♪ブラームス(ベリオ編)/クラリネット・ソナタ第1番 ♪モーツァルト(野本洋介編)/アダージョ K.580(アンコール) ♪グルック(ワーグナー編)/歌劇「アウリスのイフィゲニア」序曲 ♪ウェーバー(ベルリオーズ編)/舞踏への勧誘 ♪ドビュッシー(ビュッセル編)/小組曲 ♪J.S.バッハ(シェーンベルク編)/前奏曲とフーガ「聖アン」 演奏会の中止や延期が相次ぐ首都圏。ホールの損壊や外来演奏家の来日回避で止むを得ない公演もあり、その判断は批判する類のものではないが、この日予定通り決行した読響と関係者の勇気には敬意を抱かずにはいられなかった。 隣町の大ホールは天井が崩落。演奏中に心無い聴衆の緊急地震速報(バイブ)が鳴る場面もあり、大きな不安を抱えて出演した方もいらしただろう。この時期に晴れの舞台を催すことに否定的な向きもあり、実際に団の内外で相当議論がなされたと聞くが、やはり開催して成功だったのではないだろうか。今回も鈴おばさんやお喋りじいさんには事欠かなかったが、そんな迷惑者達をも包み込み懐柔するほど、特異なシチュエーションを共有する者同士の不思議な一体感が漂っていたと感じた。 演奏は全体的に慎重。下野さんは要所でアタックやパッションを注ぐが、オケが少々安全運転で中庸な響きへ落ち着きがちだった。編曲選というプログラムの影響もあったかもしれない。ただ、その傾向は暖色系の優しい音楽ではプラスに作用する。例えば「小組曲」、仏色や田舎味が薄くエスプリには乏しいものの、適度な透明感と丸みを帯びて何とも手触りのよい音楽が展開した。また「アウリス」はテンポ快調、Vn+Flユニゾンのふわりとしたメロディラインが心地よい。この曲、ピチピチした原曲を鈍重に濁した編曲が実は好かないのだけれど(学生時代お勉強のため死ぬほど弾かされた思い出もマイナスに作用)、この日のようにさりげない推進力を湛えた演奏で聴くと作品の無垢な魅力が伝わり心温まった。 一方でバッハの2曲は少々精彩を欠いたか。エルガーは、もう少し糊の効いたシャツのようにパリッとした演奏が好みではあった(特にフーガ)。聖アンも、難曲ではあるけれど、こちらももう少しキレや響の輝かしさが楽しめると嬉しかった。 クラリネット・ソロを吹かれた四戸さんはこの日が読響団員として最後の舞台。木の温もりを感じる音色と丁寧に紡ぐようなタンギングで、ブラームス晩年独特の枯れた叙情が自然と香るような演奏だった。アンコールは打楽器団員の野本氏による編曲。思えば冒頭のGアリもストコ編…「トランスクリプション名曲集」と題したコンセプトは見事に貫徹された。なお、ブラームスのベリオ編はネット上にも編成情報が希少なようなので、以下備忘代わりに。 ≪Cl-solo、弦5部、Fl2、Ob2、Cl2、Fg2、CFg1、Hr3、Tp2、Tb1、Timp1≫ 終演後、多数の団員さんと下野さんがロビーに並び、読売の財団を経由した被災地支援募金へ協力を呼びかけた。大学オケでお世話になった先生が募金箱をお持ちで、ほぼ10年ぶりにご挨拶したら覚えていらして少しお話できた。客席には、楽器の前々師匠や演奏会でよく拝見する常連さんもちらほら。今まで当たり前に思っていた音楽を通じた人とのつながりが、この日は一際温かく心に染みた。
by mamebito
| 2011-03-24 00:18
| コンサートレビュー
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