タグ
レビュー(602)
オーケストラ(412) LFJ(76) ピアノ(62) 室内楽(58) アマチュア(52) チェロ(50) 都響(44) 弦楽四重奏(44) N響(36) CD(35) 東響(28) 新日フィル(26) 交響曲(23) ヴァイオリン(19) 以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
お気に入りブログ
外部リンク
記事ランキング
検索
最新の記事
ブログジャンル
|
2010年11月26日(金)19:00~ 紀尾井ホール
トン・コープマン+紀尾井シンフォニエッタ東京 ♪ベートーヴェン/交響曲第2番、同第6番「田園」 コープマンが形作るベートーヴェンは、軽やかな水彩画のようで色味が豊かだった。 弦はピュアトーンが基調。Va4・Cb2に対してVc3という編成は、所々物足りなさを否めなかった。ただ、コープマンが描くベートーヴェンはピラミッド・バランスとは一線を画す身軽なもの。そう分かって聴けば、めまぐるしく入れ替わるパートバランスや、紋切り型でなくとても動的な表情等々を素直に楽しめた。 そうしたコープマンのアプローチは描写的な「田園」にマッチ。冒頭の弦楽合奏からしてピュアトーンが威力を発揮、たいへん清澄な響きに惹かれる。私はさほどこの曲が好みではないのだけれど、ご立派で教条的なベートーヴェンの対極にあるようなサウンド構築のおかげで、抵抗なくすんなりと作品に入っていけた。流線型の音が至るところでヒョコヒョコと顔を覗かせる。弦と木管の攻守交替など明確で、細部まで非常に見通しがよい。そこに、Cb河原氏+池松氏の最強コンビが、打楽器のかわりにクサビやリズムを打ち込んで音楽にクッキリと輪郭を与える。まるで、柔らかな印象画を濃色の額縁が引き締めるかのように。 「田園」の最後、コープマンが腕を下ろすまで会場は静かに余韻を楽しんだ。最近は当たり前のようにフライング拍手が後味を害するから身構えていただけに、この自然な静寂にはちょっとした感動すら覚えた。今までKSTの客席は保守的過ぎて良い印象がなかったのだけれど、少し見直した(笑)。 玉に瑕だったのは、前回ボッセの時にも感じたように、Timpがフルオケ並みに強すぎてせっかくの繊細な表現を打ち消す場面が多かったこと(さらに言ってしまえば、叩いていない時にしょっちゅうマレットの柄をぶつけて雑音を響かせていたのには閉口)。そのため、第2番では色々と工夫が織り込まれていたのに(特に清冽な第2楽章)、聴き終えた全体の印象は単調に帰した。他方、第4楽章にしかTimpが登場しない「田園」は、上述のとおりコープマンの軽妙な筆致、マエストロがやりたいことがしっかりと実を結んでいたと感じた次第。 楽団は、客演で多様な表現を求めるマエストロの意図をよく再現していたと思うが、どうしても練り込み切れていない部分、ニュートラルで判然としない部分はあった。特に木管は、フレキシビリティの要求レベルが高いからか戸惑っているように聴こえるパートもあった。 ともあれ、コープマンのキビキビと清々しいカーテンコールは、終演後の会場をパッと朗らかに染める。あんなに“体中が笑顔”といわんばかりにニコニコを振りまいてくれる指揮者はなかなかいないだろう。その姿は、20年近く前に芸劇でモーツァルトSym全曲を振った時と全くと言っていいほど変わらなかった。今やBPOやバイエルンにも当たり前のように客演する名匠。アーノンクールやブリュッヘンが老境に至る中、まだまだ元気なコープマンの姿になんだかホッとした。
by mamebito
| 2010-12-03 00:45
| コンサートレビュー
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||