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2009年4月10日(金)19:00~ 東京文化会館
ドミトリー・リス+東京都交響楽団+Vc.堤剛 ♪ラロ/歌劇「イスの王」序曲、チェロ協奏曲 ♪フランク/交響曲 タイミングというのは合う時には重なるもので、先日のインバルに続いて都響2009-2010シーズンの定期オープニングを聴くことができました。今回はぜひ聴きたいプログラムでした。あらゆる序曲の中で「イスの王」は最も好きな作品の1つ。それをフルネが薫陶を授けた都響で聴けるのですから。 近年の4月はニューアーティストとの共演を意識しているそうで、今回はウラル・フィル音楽監督のリスが在京オケ初登壇。LFJ2007の印象では、直情的で引き締まった音楽をする人、旧ソ連で言えばアルヴィド・ヤンソンスやコンドラシンのような流れに大別される音楽性を感じました。本日も熱心に腕を振り回しておられましたが、同時に交通整理もお上手でよく目の行き届くタクトという印象を持ちました。 そうした美点が結晶したのが「イスの王」。先入観もあるかもしれませんが、冒頭の弦合奏はフルネの音が生きていて早速涙を誘います。日本で一番好きなオケ・オーボエ、本間氏の導入は最上級で、続くクラのソロも表情豊か。Allegroに入るとリスの引き締まったドライヴが曲想にぴったり。弦は14型と中規模ですが、エッジが効いた精度の高い合奏のおかげで重厚な管打群に負けず力感十分。練習番号Dからの第2主題はよく歌い引き込まれますが、情におぼれず練習番号Fのテンポプリモで引き締まった全合奏へと移行します。そして堤氏の前でやりにくかったかもしれない田中雅弘首席のチェロ・ソロが堂々と歌い、心のこもった伴奏チェロ合奏もあいまって見事な再現部を形成します。終結の勇ましさは胸のすく快さ。ここは精度抜群のトランペット群がこれ以上望みようもない合奏で攻めてくれました。終盤の7連符を金管を落として浮き立たせてからクレシェンドで持って行くなど、とてもこの曲を「初めて指揮する」(リス氏談)とは思えない鮮やかさ。先日のチャイ5同様に感じ入って熱い拍手を送りました。 続くラロ・コンは、曲が単調であまり面白いと思えないのですが、今日はリス+都響がわかりやすい伴奏を付してくれたので以前より親しみを感じました。堤氏はスピーカー内蔵かと思う程の豊かな音量が健在で感心。荒れがちな音色や音程も今日はかなり安定しており、同曲のライヴとしてはなかなか名演だったのではないかと思われます。 フランクの交響曲も、序曲における「イスの王」と同じぐらい好きな作品なのですが、リス氏の解釈は私の趣味とは肌合いが異なりました。前プロ同様に引き締まった前へと進みたがる演奏で、それがふくよかさを減じ行間に漂うエスプリをかき消してしまう感じを持ちました。東欧系の巨匠の録音(クーベリックやザンデルリンク)に近い印象で、私の愛聴盤(ヘレヴェッヘやデュトワやプラッソンやジュリーニetc)とは趣が異なります。そしてこれも先入観かもしれませんが、都響ももっと余裕や間合いを欲しているように感じ、いっそう熱いリス氏との間に温度差が。合奏上ヒヤッとする箇所すらありました。それでも、2楽章前半や3楽章中盤のtuttiには都響のフランスものらしい(≒フルネ風の)品の良い音色が聴こえ、フィナーレも適度な高揚を愉しめました。 どんなに好きなのかと言われそうですが、都響のよい演奏を聴くとついつい長く書いてしまいます(笑)。本日の演奏とは別件で、この4月から都響のVI(ヴィジュアル・アイデンティティ≒ロゴマーク)が新しくなりました。佐藤可士和氏によるデザインで、これがまた都響の美質を示しつつ未来への期待感も内包するイメージに仕上がっていると思うのです。例えばベルリン・フィルはフィルハーモニーの五角形を組合せたVIを新作しましたが、ロゴという象徴(視覚)が無意識的に団の内外へ与える影響は軽視できないと思うのです。都響の投資判断は正しいと思いますし、インバルとも相性良く、ますます期待が高まります。
by mamebito
| 2009-04-11 01:26
| コンサートレビュー
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Comments(2)
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