タグ
レビュー(602)
オーケストラ(412) LFJ(76) ピアノ(62) 室内楽(58) アマチュア(52) チェロ(50) 都響(44) 弦楽四重奏(44) N響(36) CD(35) 東響(28) 新日フィル(26) 交響曲(23) ヴァイオリン(19) 以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
お気に入りブログ
外部リンク
記事ランキング
検索
最新の記事
ブログジャンル
|
吉松の夢幻的な『プレイアデス』、フランス系ピアニストによる演奏を首を長くして待っていました。過去にリサイタルでも取り上げたロジェによる新譜は待望のリリースです。
♪吉松隆/「プレイアデス舞曲集Ⅰ-Ⅶ」~ 水によせる間奏曲、過去形のロマンス、さりげない前奏曲、球形のロマンス、夕暮れのアラベスク、小さな春への前奏曲、けだるい夏へのロマンス、秋の舟唄、冬のパストラル、鳥のいる間奏曲、間奏曲の記憶、途切れた淡い前奏曲、遠い夢のロマンス、真夜中のノエル、静止した夢のパヴァーヌ ♪サティ/3つのジムノペディ、6つのグノシエンヌ、太った木の人形のスケッチとからかい、貧者の夢想、愛撫、ジュ・トゥ・ヴ、サラバンド第3番 Pf.パスカル・ロジェ (録音:2008年8月29日~31日/秋川キララホール、東京) 本アルバムは作りが凝っています。サティの名曲と『プレイアデス』がほぼ交互に並ぶ。有名なジムノペディ第1番に始まり、吉松の「静止した夢のパヴァーヌ」で終わる全73分。正直、サティの後で吉松を聴くと後者の“淡さ”が目立ち、逆にサティの巧さと味わいが際立つ。目当ての『プレイアデス』が間奏曲的な脇役に転じた印象でした。できれば『プレイアデス』単体でもっと動的な舞曲も加えて、不思議な吉松ワールドに浸りたい気もしました。 アルバムタイトルは「クリスタル・ドリーム」。ジャケットはロジェ自ら探し当てたお気に入りのイラストレーター松井しのぶ氏による書き下ろし。タイトルもジャケもずいぶんキャッチーな印象ですが、中身はイージーリスニングの上を行く真摯な音楽そのものでした。 粒立ちの良い自在なタッチは昔と変わらず。表情には一段と余裕が生まれ、80年代のDECCA名盤群より静謐な印象。感傷に流されないクールな中に、僅かなエスプリが適量の薬味となって魔法のように効いています。あ、これっていかにも“クリスタル・ドリーム”?(笑) 『プレイアデス』は間違いなく現存する最高の録音。松谷翠氏の初期録音や田部京子氏の連作も曲の魅力を素直に伝えてくれましたが、ロジェのハイセンスな演奏は作品の普遍的な格を数段引き上げたようです。「小さな春への前奏曲」の優しすぎない優しさにホッとし、「静止した夢のパヴァーヌ」の気だるい叙情は深みがあり脱帽します。 が、やはり垢抜けたサティの方が数段魅力的。「ジュ・トゥ・ヴ」の微妙な崩しなど自家薬籠中の最たるもので、もはや語りの領域。さらにニュアンスに富む絶妙のリズムセンス。サティ名曲選集としても素敵な演奏がそろっています。 録音も優秀。繊細なタッチをクリアにとらえただけでなく、ロジェが自在に創り出す質感(透明感や瞬間の温かさ)がかなり近いところで感じられる印象です。 ロジェ自ら組んだという曲順にサティと吉松の連接性までは感じ得ぬところですが、ゆったりと聴き流しているうちにふと何か見えてくるのかもしれない。予想以上の好企画でした。
by mamebito
| 2009-03-18 21:48
| 録音
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||