2018年2月10日(土)18:00~ NHKホール
パーヴォ・ヤルヴィ+NHK交響楽団
♪マーラー/交響曲第7番「夜の歌」
パーヴォ・ヤルヴィはドイツカンマーとの演奏が好きで、何度も来日公演を聴いてきたが、N響とのコンビはこの日、マーラーの交響曲で4番・9番と並び好みの7番で初めて拝聴した。
第1・2楽章はガサついたものの、第3楽章以降は指揮者がやりたいことが形になった演奏だった。他の作品と同様、パーヴォさんのタクトはテンポの出し入れと強弱(特に弱の方)のメリハリが目立つ。おかげで、長大な作品が長く感じられないほど情報量豊富、特にLiveで聴くと今まで気付かなかった作品の魅力を発見することがこれまでに何度もあった。この日の演奏もそれを目指した結果、前半楽章は楽員さんの中やマエストロとの間で様々な思惑が飛び交い、噛み合ったり合わなかったり、言わば一進一退の攻防が繰り広げられた。後半からは思惑が噛み合ったように聴こえた。作曲者が考え得る表現を詰め込み、しかも2時間ぐらいかかるところを75分に縮めたような異形の交響曲を、マエストロは全て聴かせ切ることを目指したように感じた。それは極めて高難度の挑戦だと思うけれど、後半楽章、特に終楽章ではそれを高い確率で実現していたのではないだろうか。
他方で、白日の下に晒された音符たちには、この作品の影の部分、デモーニッシュな雰囲気が少々乏しかったのは仕方ないところか。ただ、それは本来トレードオフではなく、アンビバレントな裡に同居するもので、だからこそデモーニッシュな作品なのであって…という無限ループに誘い込むところがまたデモーニッシュなのである。
オーケストラは、特に前半で合奏が噛み合わない瞬間が何度かあり、弦は硬い印象で、最近一段と艶やかで深くなった美音がなかなか聴こえてこなかった。金管も万全ではなかった。ただ、第2楽章の後半から落ち着きが見え始め、第3楽章では噛み合って力強いN響のtuttiが3階席まで届いてきた。Vcは首席代行の桑田さんがサイドに座り、日フィルソロ首席の辻本さんがトップに客演した。彼のソロはまさにソリストの音楽で素晴らしかったが、パートとしては終楽章の見せ場でグズグズっとなってしまったし、良くも悪くも普段のN響とは雰囲気が異なった。普段とちょっと違う雰囲気は、この日の各パートに多かれ少なかれ感じられた。その中で、Vaパートは一体感が強く佐々木さんのソロも圧巻で、中声部の充実が演奏を聴き応えあるものに高めていた。Vaがオーケストラの要であることを証明するパフォーマンスだった。