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2015年8月5日(水)19:00~
ミューザ川崎シンフォニーホール 大野和士+東京都交響楽団 ♪プロコフィエフ/バレエ音楽「シンデレラ」第1組曲 ♪ショスタコーヴィチ/交響曲第5番 最近タコ5を聴いたのは、1年半前のペトレンコ+オスロ・フィル。その時よりも厳しく、内面に切り込んでいくような演奏だった。そのために必要な合奏の緻密さと楽団のパワーは言うまでもなく。サマーミューザの都響公演、タクトは大野さんだ。 前半楽章は、力強くも洗練されたコントラバスが音楽の格を押し上げた。日本に戻り首席に着任されて以来、言わば“池松力”にこれほど圧倒されたのは初めてだった。第1楽章、開始の15秒程前から池松さんを注視していると、左手を第1音にセットした後、遠目には微動だにしないその姿勢から、オーケストラの盤石感を一人で担っているような強さが漲っているように見えた。そして冒頭低弦の切り込み、あの一撃でこの日の演奏を只ならぬものに決定付けたと言っても過言ではないだろう。第2楽章も低弦キャラクターを決定付ける。太くたくましく、適度にザクリとした風合いで、一音の頭に明確なアタックと、拍感を湛えた躍動が全て満たされていた。後続する音楽は基本的 に以下同文といったところか。第3楽章は白眉。都響らしい品の良い佇まいの中で(これは久々コンミスのおかげもあろう)、凝縮されたエレジーが奏でられた。第4楽章は、アッチェレランドやクレシェンドの設計に無理がなく、それでいて十分な切迫感があり、知情のバランスが取れた印象。終盤に向けても有意義で、クライマックスの音圧には圧倒されるばかり。最後まで緊張感の高い、理知的かつ実直な、深く胸に迫るタコ5だった。満席に近い客席の大喝采も然り。 プロコのシンデレラを、組曲とはいえこのコンビで聴けたことも幸せだった。タコ5よりも落ち着いて、都響の硬質な音色と緻密なアンアンブルが作品にぴったり。中盤、合奏の難所が混濁せず、ミューザの豊かな残響に各声部が伸び伸びと折り連なっていく様は、鮮やかで感嘆するしかない。終盤の0時の鐘で打楽器ばかりやかましくならず、高弦・低弦・木管・金管が無理なく動きデモーニッシュな表現を聴けたことも秀逸。市場録音も含めて、私の同曲鑑賞経験の中で最高の演奏に違いなかった。大野さん+都響には、プロコフィエフをどんどん演奏してほしいと思った。 他方で、ちょっと気になることもあった。まず、若干音が堅く聴こえた。それはインバル就任時の千人でも感じたので、ミューザの特性なのかもしれないが、ホールによっては堅さが際立って聴こえてしまうのかもしれない。そして、常に雰囲気がピンと張っている。元々都響はふんわりしたキャラクターではないし、緩んだ演奏よりも緊張感があった方が特にタコ5にはマッチしている。ただ、仮にこの演奏を欧州公演で披露したら、向こうの人たちの耳にはどう聴こえるだろうか、と想像した。未だに色眼鏡で聴く方々がいる。そして実際に、欧州の語法とは違う訛りみたいなものを感じる方々もいる。日本のオーケストラへの、賛辞とも批判とも言えるステレオタイプ・・・機 能的には素晴らしいが面白くない、完璧だが生硬で色彩がない・・・等で片付けられてしまわないだろうか。都響がホームグラウンドで聴かせるパフォーマンスは、そんなステ レオタイプで一蹴されるものではないだけに、欧州で楽団の美質を100%響かせてほしいと思う。その意味では、この日の演奏は90点ぐらいであって、自分は十分に感激したわけだけれど、欧州の一部の色眼鏡を黙らせるにはあと一歩だろうな、と思った。杞憂かもしれないし、そもそも大野さん+都響に欧州の聴衆をギャフンと言わせてほしいわけでもないのだけれど。7/19に続いて都響の素晴らしさを堪能したら、ちょっぴりご無沙汰していた都響愛の火力が強くなってしまった。
by mamebito
| 2015-08-16 22:15
| コンサートレビュー
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