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2014年10月19日(日)15:00~ NHKホール
ロジャー・ノリントン+NHK交響楽団 Pf.フランチェスコ・ピエモンテージ ♪ベートーヴェン/序曲「レオノーレ」第1番、 ピアノ協奏曲第1番 ♪ドビュッシー/前奏曲集第2集~第12曲「花火」(アンコール) ♪ベートーヴェン/交響曲第7番 一般的に有名かどうかは関係なく、その人にとってかけがえのない大好きな曲、というものがないだろうか。 自分の場合、例えばハイドンのオックスフォードとか、モーツァルトのSym21とか、フランクの交響的変奏曲とか、シベリウスのSym3とSym5とか、シュニトケ(スピヴァコフ・ミルマン編)の「旧い様式による組曲」とか、メシアンのコンセール・ア・キャトルとか、スカルソープのナイト・ソング・・・など。同じ位置付けに当たるのが、この日の冒頭で演奏されたレオノーレ序曲の第1番だ。 有名なのは第3番だろう。確かに、喜怒哀楽の濃度と展開の巧さという点では、第3番の完成度が高いと思う。でも、第1番は朗らかさと自然な躍動が快くて、人為的には再現できない青春の一瞬を切り取ったような特別な魅力を備えていると感じる。好きなのは、圧倒的に第1番だ。しかしながら、演奏機会が多くない。この日はまず、何よりも最初の序曲が楽しみだった。 演奏は、ノリントンらしく1つ1つのサウンドに変形を加えながらも、作品の爽やかさを損なわず推進力に満ちた素晴らしいものだった。演奏する方々の作品への愛情が滲むように感じたのは自分だけだろうか。全体に弦の質感がたくましく、構成感が立体的でありながら、音楽が滞ることなく足取りは軽やか。レオノーレ第1番が、これほど絶妙なバランスで奏でられた演奏を聴いたのは初めてで、月並みな言葉にしかならないが、ただただ嬉しかった。 続くコンチェルトのピエモンテージは、Liveで聴きたいピアニストだった。ビエロフラーヴェク+BBC響との録音が、線は細めながらも、タッチの粒立ちとさり気ない装飾が師匠ブレンデルに似て、好みの演奏だった。この日も前向きなテンポでタッチはコロコロと軽快。アクが無さすぎるという声も聞こえてきそうだが、ことベートーヴェンの1番のコンチェルトには最適で、胸の空くという形容詞がピッタリの演奏だった。2001年の冬にベルリンのフィルハーモニーで聴いた、ブレンデル+アバド+BPOによる、同曲の忘れ難い名演を想起した。ノンヴィブラートのオーケストラからは、洗練された温かい響きがして、特に第2楽章は幸福感に満たされた。 メインのベト7は、スコア自体が演奏によって極端な差が出にくい。この日は、N響の充実した響きを殺すことなく、前向きに過ぎないテンポで、クッキリと彫刻していく演奏だった。第2楽章は、オーソドックスとされるアプローチに比べるといつも通り速いのだけれど、むしろ重苦しい空気と倦怠感が漂わず、ノリントンのアプローチの方が本質に適っていると感じる。この辺りのテンポ作りは、鈴木秀美さんの絶妙なそれと通じる気がするのだが、どうだろうか。秀美さんによるベト7も早く聴いてみたい(6番以降はオフィシャルにはお振りになっていないはず)・・・と妄想を膨らませながらこの日の演奏を楽しんだ。 ノリントン+N響、初共演時はワクワク楽しんでいる人と拒絶反応を起こしている人の音がtuttiで交じり合いぶつかり合い聴こえたものだが、今やずいぶんこなれて、コミュニケーションが円滑になったのではないだろうか。相思相愛のコンビに聴かれるスムーズな意思疎通(例えば先日のヤマカズさん+スイスロマンドで感じたような)が随所で垣間見られた。N響の歴史がどうとか、ピュアトーンの好悪といった論は置いておいて、こういう噛み合った、お互いに正視して向かいあって取り組んでいる感じがする音楽というのは、快いものだ。
by mamebito
| 2014-12-22 22:40
| コンサートレビュー
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