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2014年1月17日(金)19:00~ 淀橋教会小原記念チャペル
fp.大井浩明 ♪ベートーヴェン/ソナタ第22番、第23番「熱情」、第24番「テレーゼ」、第25番「かっこう」、第26番「告別」 ♪鈴木純名/白蛇、境界をわたる(アンコール) ずっと聴きたかった大井さんをやっとLiveで拝聴。会場が、某国カ○ト教団と繋がりがあるとも聞くホー○ネス教団の根城だったので二の足を踏んだものの、弾くのは確かに大井さんだし、ロームが助成してるし、教会も施設の一般貸しで小銭を稼ぎたいだけなのだろう。普段なら忌避する異界をセーフティラインの手前から覗ける好機と捉えて、大久保の淀橋教会へ。 どうせなら大久保駅沿いの大聖堂内を拝見したかったところ、会場はその手前ビルの2階にあるこじんまりしたチャペル。これがコートを手放せないほど底冷えする。大井さんも、『熱情』の演奏前に一言「まさかここまで冷えるとは思っていなかった」とポツリ(笑)。しかも、効かない空調の作動音が堂内を秘かに支配しており、フォルテピアノ(fp)の繊細なニュアンスを余す所なく汲み取るまでには至れなかった。普段何気なく通っているコンサートホールの類が、自然な静寂作りの点でいかに優れているかを思い知った。 そのような鑑賞条件ではあったものの、大井さんのfp自体はヴィヴィッドで迫真。1/3程度しか埋まっていない客席を音楽の彼方へ運ぶには十分すぎる演奏だった。第22番は親密で古典的な曲調と楽器の音色がぴったり。独特の雅味を堪能した。第23番は、第1楽章から大井さんの冴え渡るタッチに驚愕。動的でありながら決して没入しない作品との距離感が心地良かった。それにしても『熱情』という曲、スタインウェイの立派なグランドを大ホールで鳴らすフツーの演奏では、普遍化されてたいそう仰々しい音楽に聴こえるものだ。fpによる演奏を小空間で聴いていると、LvBが自慰で書いたのではと思えて、めくるめく展開や執拗な終楽章にオタク的こだわりを色濃く感じて仕方ないのだけれど。底冷えを忘れるほど湧いた客席に一礼して、あっさりと第24番へ。楽器が小ぶりなスクエア型に変わり、第2楽章(終楽章)のvivaceがたいへん小気味良いこと。 調律と椅子修理(笑)で15分程の休憩を挟んだ後半はさらに圧巻。個人的に、LvBのピアノソナタは第1番~第7番までと、第25番・第26番辺りが一番好みだったりする。そんな期待にも増して、大井さんのタッチの濃度は尻上がりに高まっていく。以前ピアニストの方に伺った話。fpはストロークが浅いので、モダンのピアニストにとっては半ば別の楽器だ、と。叩きすぎると汚い音で一辺倒に鳴ってしまうし、弱すぎると表現以前にタッチが立たない、と。翻って大井さんのタッチは、振幅に富み勢いがあって、しかもおたまじゃくしが漏れなく鮮明に再現される。第25番のvivaceを件の小ぶりなスクエアで軽やかに切り上げると、第26番は深呼吸してグランドに向かい、いっそうシリアスなアプローチに。純粋に耳に届く楽曲として、『告別』の深さ・巧みさは類稀なものだと改めて認識する演奏だった。夢中になって拝聴し、一生懸命拍手を送った。 アンコールは、「このプログラムの後でないと意味がない」「聴けばお分かりになる」と大井さんが語った鈴木純名さんの作品。詳細は作品の委嘱者である大井さんのBlog(2008年京都での全曲シリーズの記事)に詳しい。『告別』の断片がパラフレーズされるのだけれど、カーターっぽくミニマル風に進みつつ、随所にリゲティのようなミステリオーソを匂わせて、相当カッコイイ作品。終演後、ロビーにたたずむ鈴木さんに「とてもカッコよく、楽しませていただきました」とお礼を伝えると、「いつもベートーヴェンと並べられちゃうんでねえ」と笑顔でお返しくださった。40代前半で既に評価高い作品を残していらっしゃるとの由。新たな出会いもあって、体は冷えきってもハートはホクホクの大久保ナイトだった。本企画は残り2公演で完結(第7回:2014.2.14、第8回:2014.3.21)。 #使用楽器:1802年ブロードウッド・グランド型68鍵/1814年ブロードウッド・スクエア型68鍵
by mamebito
| 2014-01-19 22:09
| コンサートレビュー
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