タグ
レビュー(602)
オーケストラ(412) LFJ(76) ピアノ(62) 室内楽(58) アマチュア(52) チェロ(50) 都響(44) 弦楽四重奏(44) N響(36) CD(35) 東響(28) 新日フィル(26) 交響曲(23) ヴァイオリン(19) 以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
お気に入りブログ
外部リンク
記事ランキング
検索
最新の記事
ブログジャンル
|
2010年11月14日(日)16:00~ 横浜創造都市センター
アンサンブル・ジェネシス Rec&A-Sax.アンドレアス・ベーレン Vn.山口幸恵 Va.川久保洋子 Vc.懸田貴嗣 Cemb&Org.鈴木優人 ♪テレマン/四重奏曲 TWV43g4 ♪小出稚子/「5人でまにまに」 ♪(即興)パッサメッツォ・モデルノによるパヴァーヌとガイヤルド ♪新垣隆/インヴェンションまたは倒置法第2番 ♪ヴィターリ/パッサカリア ♪スウェーリンク/「大公の舞踏会」 ♪鈴木優人/アポカリプシスⅤ ♪ブクステフーデ(鈴木優人編)/パッサカリア ♪デリギアニス/「ハルピュイア」 ♪ベーム/サラバンド(アンコール) ピリオド演奏の最前線で世界的に活躍する若手が集うアンサンブル・ジェネシス。いわゆる古楽器のみでバロック以前~現代まで分け隔てなく扱う、コンセプチュアルな演奏団体。400年近い時代間隔を行き来するプログラムに頭が熱くなり、あっという間に充実した2時間が過ぎた。 冒頭のテレマンから、しっとりとした質感と闊達なリズム感を合わせ持つ素晴らしい演奏。弦楽器3人の音色は豊かで、ベーレンさんのレコーダーは驚くほどしなやか、鈴木さんのチェンバロは色彩とリズムが秀逸。ヴィターリとブクステフーデ、アンコールも同様に理想的で瑞々しい合奏を堪能した。即興演奏とスウェーリンクでは、以前BCJ定期@オペラシティで感嘆した鈴木さんのオルガンも愉しんだ。 こうして分けて書くことは本意ではない気もするが、以上バロック期の作品以外は全て現代(というか現在)の初演作品。しかも作曲者は20代中心の若手。好奇心旺盛で楽音に留まることを知らない刺激的な作品ばかり。 特に強烈だったのは、ギリシャ生まれの27歳デリギアニスの「ハルピュイア」。ギリシャ神話に登場する同名の生き物(女性の頭と鳥の身体を持つ)をVnが“演じる”。山口さんは舞台に散らばる台詞の断片を叫びながら右往左往しつつVnで心象?を奏でる。ベーレンさんがアルト・サックス(音大で修めたという)に持ち替え、様々な奏者に影のように付き添ったり時に激しいソロを奏でたり。不協和音の嵐と「捕まえろ!」の叫び声が繰り返されて異様な緊張感を帯びる。作品にストーリーはなく、静寂の後に音楽は唐突に幕を閉じる…。 個人的には鈴木優人さんの「アポカリプシスⅤ」に惹かれた。響きに一本筋が通っていて、刺激行為を用いず音響の多様さを巧みに操る作風。Recが正面、Vnが右、Vcが左、Orgが後、というフォーメーションで客席を取り囲む。不協和音や重層性だけでなく各楽器のピュアな響きが活かされているので、聴衆は楽器間の対話に巻き込まれてインスピレーションを掻き立てられるようだった。 小出さんは象徴的な画像を映写して、ポップで可愛らしい印象を残す作品。とはいえメロディアスなわけではなく、他の作品に比べて角が少なく各要素が小さな球体のような印象で、球体どうしの間隔や連続をうまく使って色彩的な音空間を生み出していると感じた。 新垣さんは振れ幅大きく親しみやすい作品。こちらも映写で抽象的画像を用いる。刺激的な絶叫音もあれば歌謡曲の断片のようなメロディを不協和音が塗り消すような場面もあって、創意工夫に満ちた音楽だった。 皆さんの巧さについては言うに及ばす。バロック作品はもちろん、現代作品での切り込みや特殊奏法(ピリオド楽器でスルポンを聴けるなんて思わなかった:笑)も全く不足はない。しかも、ガット弦とバロック弓が導く丸みを帯びて柔らかい音色が、初演作品に“出来たてホヤホヤ”といったハンドメイドの質感を与えていたのは興味深い。 また客席も楽しい。幾人か音楽家のお顔を拝見したし、後ろの席には鈴木優人さんの父上もいらして、何だか畏れ多く背筋が伸びっぱなしだった(笑) 旧横浜銀行(第一勧業銀行)本店という歴史的建造物の内部で行われた本公演。内装は石の床に白塗りの柱・壁・天井、味のある西洋建築(下写真)。上背のある空間に適度な残響を伴って立ち上るジェネシスの音色は、この上なく味わい深く、またスリリングだった。(写真もう1枚は洒落たプログラム冊子)
by mamebito
| 2010-11-22 01:03
| コンサートレビュー
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||