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2009年6月14日(日)14:00~ 港南区民文化センターひまわりの郷
カルミナ四重奏団 ♪ハイドン/弦楽四重奏曲第77番「皇帝」 ♪バルトーク/弦楽四重奏曲第2番 ♪シューベルト/弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」 ♪ラヴェル/弦楽四重奏曲~第2楽章(アンコール) 初めて訪れた「ひまわりの郷」は予想以上によく出来たホールでした。収容人数483人で室内楽に絶好の空間。上背があり、1階席の傾斜が急で舞台を見下ろしやすい。また、紀尾井やフィリアなら中空になってしまうポジションに1階中列が来るような構造で、響きも自然で明晰。クラシック音楽は、今日のような横浜楽友会主催の年数会の企画etcしか無いようですがその中身は優れており、これはなかなかの穴場だと思いました。最寄の京急上大岡は品川から特急で約30分。ホールは駅直結で便利。 さて演奏は、今や推しも推されぬ名門カルミナQ、悪かろうはずがありません。この日は若干1stが不安定ながらも、全体には相変わらず腕達者で洗練の極みを聴くようでした。合わせて、様々な和音の遷移が苦もなく届いてくることに、類稀に耳がよいカルテットであることも再確認。また、ライヴの彼らは即興性も魅力。バルトーク以外は15年程前に名盤を残していますが、それらともちょっと異なる解釈で説得力の高い音楽を示してくれました。 とはいえ、やはり、バルトークは圧巻でした。スリリングな第2楽章は切れ味とパンチ力が並大抵ではない。同楽章後半に弱音で4本の楽器がうごめくような部分も恐ろしくクリアで、作品の印象を洗い直しました。第3楽章、緊張感とグロテスクな叙情と繊細さがない交ぜになって非常に濃厚な音楽。その完成度にも脱帽するしかありません。 「皇帝」「死と乙女」という超名曲でもカルミナが提示する音楽はもぎたての果実のように新鮮。皇帝の第2楽章は、4人の艶やかな音色もさることながら、各楽器へ謳い次がれる主題に均一性の内にも各人のテンペラメントが反映されていてそれぞれの語りを聴くような魅力がありました。死と乙女は作品の持つ二面性―死神に怯えるような繊細な叙情とダイナミックな激情の吐露―を過不足なく表出。第4楽章では演奏中に1stエンデルレ氏の肩当がコトリと落ちるハプニングがありつつも(あんなに動きの大きな人だとは知りませんでした)、最後まで緊張感が途切れることなく見事な完成度で描ききってくれました。 さらにアンコールのラヴェルは、第一生命ホールの曲目でもあり予想はされましたが、その予想をはるかに超えた新鮮な演奏で鳥肌が立ちました。テンポにはまらない謳い回しやピッツィカートの分散など、各自が自由に音楽へ息吹を与えながらも、音楽は一体として完成度が高い。ホールの空気を一瞬にして洒脱に塗り替えて酔わせてくれました。 彼らの舞台上のポジショニングも気に入りました。最近、とかくギュッと寄り添って音の発生源を凝集しようとするカルテットを多く目にするのですが、カルミナは客席に向かい扇型で比較的各自が空間をとり、特にVcはVn&Vaと離れて伸び伸びと奏でていました。それは良し悪しではなくスタイルの相違なのですが、カルミナの音楽は視覚的にもその体を表しているように感じて一人納得した次第です。 余談ですがもう少しひまわりの郷について。お客さんの年齢層が非常に高く、良い意味で反応が素直。このいわば草食的な雰囲気、なぜかとても久しぶりで懐かしい気がしました。バルトークは「よくわからないけれど良かったのだろう」といった拍手、死と乙女やラヴェルは沸き立つような拍手が会場を満たしました。お行儀の面では開演中に飴の包みを開く音もしましたが、演奏がforteの時を狙ったり申し訳なさそうにチビチビ開ける様子(笑)が感じられて、武蔵野などに比べると良識的で何だかホッとするものがありました。 演奏の点でも会場の点でも、久々に充実著しい室内楽を堪能しました。
by mamebito
| 2009-06-18 00:11
| コンサートレビュー
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