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ファイ+ハイデルベルク響の『ロンドン』を聴いてから、改めてこの曲にハマっております。そこで、ブリュッヘン+NJPのロンドン・セット最終回を控えたこの機会に、愛聴している『ロンドン』でいくつか予習しておくことにしました。
♪モーツァルト/交響曲第33番 ミヒャエル・ギーレン+南西ドイツ放送交響楽団 (録音:1988年6月、1987年11月、1990年4月/ハンス・ロスバウト・スタジオ、バーデン・バーデン) 東京23区の某区図書館でこのディスクを発見した時は目を疑いました。現在廃盤、ギーレン壮年期のハイドン。この時期のギーレンは透徹した厳しい音楽が特徴。最近のヘンスラーへの録音群は豊かで老練の巧さもありますが、90年代前後の辛口の音楽は他に得がたい黒光りの魅力を放っています。 『ロンドン』はHaydn-MozartPresse版を使用。第1楽章冒頭は16小節間のAdagioで始まりますが、ギーレンは17小節目以降のAllegroとほぼ同じテンポで演奏を開始します。そういえばモーツァルト第39番の冒頭も同様に快速でした。音を切り刻みインテンポで突き進むAdagioは前代未聞ですこぶる刺激的。甘みの一切ない引き締まった合奏が、厳しい音楽の深遠へと聴き手を引き込みます。 続くAllegroも快調。フル・オーケストラのサウンドでありながら、とにかく徹底的に引き締まっており曖昧模糊とは最も遠いところにあります。また、228小節目からの“レレレレミーレ”の主題を“ミ”を中心に<>(クレシェンド&デクレシェンド)するなど、今では当たり前のアーティキュレーションを既に明確に実践している点も目を見張ります。 第2楽章、ここも快調なAndanteで完全にインテンポ。丁寧なカンタービレが美しい弦合奏など、毅然とした内にも作品が孕むロマンの萌芽を禁欲的に垣間見せます。42小節目からの全合奏では、中音域楽器を中心に8部音符の和声がくっきり聴こえて新鮮。 第3楽章、早めのMenuetは切れ味よく、アウフタクトや音の末尾に拍感が乗っていてとても躍動的。音の頭がかっちりしてお尻を無駄に伸ばさないためか、例えばVnが2拍目で切れて3拍目から低弦が入るような“裏拍の構造感”が自然と浮き上がってきます。18小節目から“シレファ・シレファ・シレファ”等の3拍子の中で2つ振りのリズムが続くところ、後ろの4部音符を強調して3拍子からの逸脱を明確に愉しみます。Trioも快く上品な味わい。 第4楽章、案外ゆっくりしているのは19小節目でフォルテになってからの情報量をしっかり聴かせるためか。ここではギーレンのバランス感覚が光ります。sfがくっきりして入り組んだ主題の遷移が手に取るように鮮やか、1stVnと2ndVnの上昇と下降の妙を絶妙なバランスで主張、記譜にない強弱変化は音楽の流れに自然でいちいち納得。見事な箇所を挙げだしたらきりがありません。 上記のように一筋縄では行かない演奏ですが、それらを上品な佇まいと求心的な合奏美の内に統合しており、そのセンスと手腕には感嘆せざるを得ません。併録の99番とモーツァルトも、録音年は異なれど同傾向の名演奏。特にモーツァルトの33番はロンドン以上の超名演かもしれません。十八番としていたクライバーの名盤がかすんで聴こえるほど。 ハイドン・イヤーを機に、ギーレンのハイドンが(安価で)再発売されることを期待しています。
by mamebito
| 2009-02-22 12:20
| 録音
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